Date:14:00-15:30, December 22 (Sat.),2007
Venue:Seminar Room (AA447) at the 4th Floor of Faculty of Engineer Building No.4.
(http://www.kyoto-u.ac.jp
Title:"Security Sector Reform(SSR) in Indonesia: Ten Years After".
Summary:
My presentation will focus on why it is very important to undertake
SSR in Indonesia, What kind of difficulties in implementing the agenda
of SSR in Indonesia, what had happened after the Police been separated from the Indonesian National Military (TNI) since 1999. What happened with the SSR after ten years period.
活動の記録:
東南アジア研究所外国人研究員のイクラール・ヌサ・バクティ氏(インドネシア科学院(LIPI)の政治学研究所所長)が、スハルト権威主義体制崩壊後のインドネシアで進んでいるセキュリティー・セクター改革について発表を行った。セキュリティー・セクター改革の目的は、スハルト体制期に強い政治的影響力を持っていた国軍を改革し、国防を中心とするプロフェッショナルな軍隊にすることである。そして、スハルト体制期には国軍の一翼でありながら陸海空軍と比べて低い地位にあった警察を国軍から分離して、国内治安の主役に仕立て上げることである。まずはじめに、イクラール氏は1945年独立宣言後のインドネシアにおける国軍の政治社会的位置づけについてきわめて分かりやすく説明した後、セキュリティー・セクター改革の具体的内容とその改革の経緯を発表した。インドネシアに特徴的な国軍による領域管理、地方レベルへの国軍部隊の展開は将来的にも続くこと、国軍に代わって警察が影響力を強めていることなどを手際よくまとめた発表であった。また、イクラール氏自身が今なお続いているこの一連の改革にかなり関与してきており、国会における2002年国防法、2004年の国軍法の制定過程についても詳しく知っていることから、非常に興味深い内輪話まで聞くことができた。
日 時:2007年12月20日(木) 15:00~17:30
場 所:東南アジア研究所 東棟2階
タイトル:「社会運動と人々:人はなぜダムに反対するのか?」
巨大な建造物であり高い技術で水を制御するダムは、多くの国で発展の象徴と
して扱われてきました。しかし、ここ10年ほど日本では無駄な公共事業の筆頭と
して槍玉に上がる存在と変わってきています。タイでも同様に住民の反対が強く
「もう国内ではダムは作れない」とまで言われています。しかし、その変化がな
ぜ起きたのか、何があって反対する人々がいるのかは一般には分かりにくいと思
います。今回は、タイで長くNGO活動をされてきた木口由香さん(京都大学ア
ジア・アフリカ地域研究研究科)をお迎えし、タイのダムを巡る1970年代の状況
を取り上げた映画と、ダム反対運動の中で2000年以降に作られた作品、さらに日
本で議論を呼んでいる熊本の川辺川ダムのドキュメンタリーを見ながらその社会
的な背景について考えてみたいと思います。
_作品1 Tongpan (1977)__ 63__分_
Directed by Euthana Mukdasanit, Surachai Jantimatorn
Produced by The Isan Film Group
Written by Khamsing Srinawk, Paijong Laisagoon, Mike Morrow
Starring Ong-art Ponethon
Music by Surachai Jantimatorn
Cinematography Frank Green
Language Thai/Lao (English subtitle)
Tongpanは1970年代、「民主主義」の普及のために地方を回っていた大学生が偶
然出会った東北タイの農民をモデルにしたフィクションです。ダム建設によって
土地を強制収用され、貧しい暮らしをするTongpanを、主人公の学生は研究者や
役人がメコン河開発事業について討論するセミナーに誘います。しかし、発言を
する前に結核を煩う妻を心配しTongpanは姿を消してしまう・・・。
1970年代のタイで、学生運動の成功と軍事政権の復活の合間に偶然が重なってで
きたこの作品は、タイでは一時期上映が禁止されていたましたが、1995年にVCD
として再版され再び注目を集めています。主人公のTongpanを演じたOng-artは、
元々ボクサーでしたが、この映画への出演をきっかけに、「東北タイの子」など
にも俳優として登場しています。
http://www.greentv.org/Tongpan/tongpan.htm より
Tongpan is a black and white theatrical film. It is based on the
real-life experience of a farmer from the poverty stricken Northeast
region of Thailand. Tongpan and his family were forced off their land
when a dam built nearby caused their farm to be flooded in the wet
season and left it parched in the dry.
They have moved to a small town bordering Laos on the Mekong River.
There, Tongpan the farmer is struggling to support his family as Tongpan
the pedicab driver, Tongpan the small time boxer, and Tongpan the keeper
of someone else's chickens.
_作品2 Rebel with a Real Cause: The story of the fight for truth over
the controversy of Pak Moon Dam__(制作年不明)_30 分
Produced by The people of Mae Moon Manyuen village, Assembly of the Poor
Language Thai/Lao (English subtitle)
Tongpanから20年後の東北タイ。1994年に建設されたパクムンダムに反対する地
元の漁民たちは、1999年から約3年間、ダムに隣接した駐車場の敷地を占拠して
Mae Moon Manyuenと呼ばれる「村」を打ち立て、生活しながら抗議をする運動を
展開しました。この運動の成功で、タイ政府から部分的なダム水門開放という譲
歩を引き出しています。この間、運動のため様々な出版物やビデオ作品が登場し
ました。この作品もキャンペーンのために制作され、住民が何故パクムンダムに
反対するのかを人々の声やニュースの映像でつづったものです。
_作品3:「ダムの水はいらん!」(東京ビデオフェスティバル2002__大賞受賞作)_
監督・撮影・編集:佐藤亮一
20分 日本語
元となった映像は、熊本県のアマチュアビデオ作家・佐藤亮一さんがダム建設
による利水事業差し止め裁判の証拠として裁判所に提出したものです。それに一
部過去の記録映像を挿入し、20分の短編として再編集された作品が本編です。ダ
ムの反対のために作られた一編が、はからずも現在の日本の公共事業の裏側を伝
える作品となっています。
日 時:2007年12月18日(火)15:00~18:00
場 所:東棟2階第一セミナー室(E207)
報告者と論題:
今回は、18世紀から19世紀にかけての東南アジアにおけるアヘン交易をめぐる 2本の報告を中心に、現在日本の学界でも関心を集めているアジア交易圏の転換過程を幅広く議論したく存じます。
日 時:2007年12月15日(土) 13:30~17:30
場 所:京都大学吉田キャンパス本部構内
大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・会議室(工学部4号館4階東側447号室)
開会の言葉 平松幸三 研究科長
主旨説明 重田眞義 准教授
■フィールドワークの部
福田晋吾
「経済のグローバル化とフィリピンの地場製造業
-マリキナの靴メーカーの経営実態調査を通して-」
姜 明江
「ザンビアにおけるハンセン病治療と回復者の生活」
中村沙絵
「現代スリランカにおける老人ホームと近隣社会
―サーベイ調査の成果と考察―」
Teshome, Dilu Shaleka
"A study of Indigenous Religion among the Sidama of southern Ethiopia"
森 一代
「ラオスからタイへの出稼ぎ労働者の研究」
■ インターンシップの部
佐藤靖明
「東アフリカ大湖地方におけるバナナの品種多様性に関する人類学的研究
― Bioversity Internationalでのインターンシップ活動―」
日 時:2007年11月24日(土) 13:00~17:00
場 所:京大会館
発題者:
小西 正捷 (人類学・考古学・民族文化史)
「『南アジア』と『インド世界』:周縁からの視点」
下田 正弘 (インド哲学・仏教学)
「他なる故郷としての南アジア:世界史化された仏教からの問い」
杉原 薫 (経済史・環境史)
「南アジア史にとって『生存基盤の確保』とは何か」
粟屋 利江 (歴史学)
「歴史研究/叙述に賭けられるもの:実証と表象の溢路を超えて」
司会 石井 溥発題要旨:
「南アジア史にとって『生存基盤の確保』とは何か」
南アジアは熱帯、亜熱帯に属し、太陽エネルギーの吸収量、物質変化(蒸発、分解など)の速度、気候変動、生物多様性などにおて、温帯とは異なるダイナミックな自然環境を有する。宗教、文化、社会の制度もそれに対応して、疫病、旱魃、その他の災害に対処できるような「生存基盤の確保」のための知恵を育んできた。植民地期に導入された技術や制度も、おそらくその基本構造を変えるには至らなかった。その結果、この地域は、少なくとも17世紀から現在にいたるまで世界最大級の人口を維持し続けている。本報告では、そのことの意味を議論してみたい。
杉原 薫
社会変容の固有音と通奏低音
—「改革」の時代のインドネシアにおける東部インドネシア・フローレス島の事例に焦点をあてて—
スハルト政権が1998年5月に倒れてから、インドネシアでは、「改革reformasi 」、なかでも地方分権化と民主化が、急速に推し進められてきた。分権化・民主化の影響は、中央からの距離、階層、文化の違いによって大きく異なる。影響の大きい地方、階層、文化についてはよく取り上げられるが、影響のとらえどころのない地域や文化はほとんど取り上げられない。しかし、そのような地域は少なくない。ここで取り上げるフローレス島中央山岳部のWG地域はその一例である。
言うまでもないが、インドネシアの地域社会は多様である。17世紀にはジャワ島を、20世紀初頭からインドネシア各地を巻き込んでいった植民地体制による抑圧と教化、第二次世界大戦後のインドネシア国家体制による抑圧と教化から、 WG地域はごく限られた影響しかうけてこなかった。辺境にある、持たざる者たちの幸運により、植民地政府もインドネシア中央政府の持続的な介入から免れてきた。植民地化以前にも、ヒンドゥー、イスラム王権の影響をこうむった証拠はみられない。かなりの程度、自治と民主的な社会を実現してきたWG地域にとって、インドネシア政府による分権化と民主化の推進はどのような意味を持つのだろうか。
インドネシアにおける分権化は、その見せかけに反して、グローバルな圧力のもと、ナショナルな中心周辺構造を守るために施行された。確かに、天然資源の豊富な地方、抑圧蹂躙されていた地方には、望ましい一面を持っている。しかし天然資源を欠き、中央政府によって持続的な関心を払われてこなかった WG地域の生活世界に、分権化の直接的な影響を見い出すことはむずかしい。
2004 年の直接総選挙、正副大統領選挙は、インドネシアにおける民主主義が一応の成立を見たとされる。しかしながら、選挙の結果からは、「ジャワ(中心主義)+エリート統治」の基盤となる選挙民主主義体制成立が見て取れる。インドネシアの推進する「民主化」は、自治と民主的な社会を実現してきたWGの人々にとって、統治される周辺的国民となる契機となるかもしれない。
このような「改革」の時代に、WG地域社会の中核部分でかなり興味深い変化が見られた( 2006年フィールドワーク)。それを紹介しながら、「社会変容の固有音と通奏低音」について考察する。
原題: A Journey to Darfur 監督: ジョージ・クルーニー、ニック・クルーニー、ア
メリカ/スーダン(2006)、23分、音声:英語
俳優ジョージ・クルーニーと、ジャーナリストの父ニック・クルーニーが今世紀最悪の人道危機が進行中であると言われるスーダンのダルフールを訪れ、生き延びた人々と対話したドキュメンタリー作品。
原題: The Refugee All Stars 監督: ザック・ナイルズ、バンカー・ホワイト、ア
メリカ(2005)、50分、音声:日本語
アフリカ・ギニア難民キャンプで暮らす隣国シエラレオネ出身の6人は、レフュジー・オールスターズというバンドを結成し、音楽を通して生きる希望を見出してゆく。難民として生活することの意味を考えさせられる感動のドキュメンタリー。
原題: The Cyclist 監督:モフセン・マフマルバフ、イラン(1989)、83 分、音声: ペ
ルシャ語、字幕:日本語
イランのアフガン難民を暖かいまなざしで捉えたフィクション。重病の妻を抱えて窮乏する難民のナシムは、自転車長距離元チャンピオンの経歴から、1週間不眠不休で自転車に乗り続ける見世物賭博に挑むことになる。「カンダハール」の巨匠モフセン・マフマルバフ監督の初期作。
原題:invisible children 監督:ドン・マクブリーティ、 ウガンダ/アメリカ
(2004)、55分、音声:英語、字幕:日本語
アメリカの大学生3人が内戦の続くウガンダ北部を旅してとった、ドキュメンタリー作品。子供達が武器となり、犠牲者となる場所での物語であり、ウガンダ北部で20年間続く内戦を生きる子どもたちへの影響を描いている。子どもたちは、反乱兵士に拉致される恐怖の中で生き、凶暴な軍隊の一員として闘うことを強いられている。このドキュメンタリーは、MTV 調の音楽にのせて速いペースで展開するユニークな映画である。若者の目を通して見るアフリカは、ユーモアラスで切なく、示唆に富んでいる。
原題:Living with Refugees 監督:ソリウス・サムラ、 制作: Insight News
TV(イギリス)(2004), 50分、 音声:英語、字幕:日本語
監督のサムラはスーダン難民と昼夜休まず三日間、およそ65km、日中の気温は40度を越す道のりを歩く。やっとたどり着いたチャドのキャンプでは、難民として認定登録されなければ、テントも食糧も何ももらえない。
「アフガニスタン-故郷での平和な暮らし」13分
「リベリア-新たなる闘い」9分30秒
「スーダン南部-解決に向けて」8分
UNHCRの日本人職員、NGO日本人スタッフがそれぞれの難民支援事業に関する現場を語る。人道支援や国際協力のキャリアを考えている方には必見! UNHCR 日本人職員が現場の混乱と物資不足の現実を解説。
・「動き出したグローバルCOEプログラム:地域研究の展開と研究教育体制の課題」
日 時:2007年11月11日(日曜日)午前10時30分~午後4時40分
この夏、いよいよグローバルCOEプログラム(GCOEプログラム)が動き始めました。 初年度(2007年度)採択の63件のなかには、「学際、複合、新領域」分野のみならず「人文科学」分野などに、地域研究プログラム、さらに地域におけるフィールド調査や地域からの視点を重視したプログラムが相当数含まれています。 GCOEプログラムは、新しい視点による集中的な研究蓄積により卓越した研究拠点を形成するとともに、「我が国の大学院の教育研究機能を一層充実・強化し、世界最高水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成を図る」(グローバルCOEプログラム委員会、「平成19年度『グローバルCOEプログラム』審査結果について」、2007年6月)ことを目的として設定されました。また、時を同じくして、一昨年に改組された日本学術会議の地域研究委員会においても、地域研究の体制と基盤の整備、とくに大学院教育の改革提言のとりまとめが議論されています。今こそ、科学者コミュニティの英知を集めた、地域研究の体制整備にむけた取り組みが求められていると考えます。 本シンポジウムは、上記のような趣旨に基づき、地域研究に関連するGCOEプログラムから、それぞれのプログラムの特色(課題設定、アプローチ、研究体制など)および次世代育成や大学院教育への取り組みについて報告していただき、新しい地域研究の研究と教育の両面における新機軸と可能性、そしてそのために必要な研究教育体制整備について、率直に意見を交わし検討する機会に、と企画しました。 このシンポジウムは、日本学術会議地域研究委員会、地域研究コンソーシアム、地域研究学会連絡協議会が、協力して開催します。 ぜひ、ご参加いただきますようご案内申し上げます。 |
シンポジウム連絡先 連絡調整担当:押川文子 〒606-8501 京都市左京区吉田本町 京都大学地域研究統合情報センター 電話 075-753-9606(研究室)9616(事務局) FAX 075-753-9602 e-mail: osikawa@cias.kyoto-u.ac.jp 会場担当(ポスター展示、会場などに関する問い合わせ):高倉浩樹 〒980-8577 仙台市青葉区片平二丁目1-1 東北大学東北アジア研究センター 電話 022-795-7572? e-mail: hrk@mail.tains.tohoku.ac.jp *準備の都合上、ご参加の場合は、連絡調整担当まで、事前にご一報いただければ幸いです。当日のご参加も歓迎いたします。 |
・プログラム (2007.9.06現在)
(敬称略)
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時間 | プログラム 講演タイトル |
10:30 | 開会の挨拶と趣旨説明 |
北海道大学スラブ研究センター(地域研究コンソーシアム会長)家田修 | |
10:45 | 報告1 |
東京外国語大学地域文化研究科地域文化専攻 |
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11:15 | 報告2 |
大阪大学人間科学研究科人間科学専攻 |
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11:45 | 報告3 |
大阪市立大学都市研究プラザ |
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12:15 -13:15 昼食休憩 |
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13:15 | 報告4 |
横浜国立大学環境情報研究院自然環境と情報部門 |
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13:45 | 報告5 |
長崎大学医歯薬学総合研究科放射線医療科学専攻 |
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14:15 | 報告6 |
京都大学東南アジア研究所 |
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14:45-15:00 休 憩
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15:00 | 報告7 |
早稲田大学アジア太平洋研究科国際関係学専攻 |
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15:30 | 日本学術会議からの報告 |
「日本における地域研究の教育・研究体制の現状とその改革」 |
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15:50 | 総括討論 |
16:30 | 閉会の挨拶 |
大東文化大学(地域研究学会連絡協議会事務局長) 加藤普章 | |
若干の変更の可能性があります。 |
日 時:2007月11月3日(土)-4(日)
場 所:京都大学 東南アジア研究所 東棟2階第1セミナー室(207)
京都市左京区吉田下阿達町 46 川端通り荒神橋東詰め
第一回 「大陸部新時代」研究会(カンボジア特集)
【要旨】
本研究会は、東南アジア大陸部における地域像の解明を目的とします。タイ研究を唯一の例外として、ベトナム、カンボジア、ラオス、ミャンマー(ビルマ)といった国々における臨地調査の実施は、長らく、ごく限られたものでした。しかし、1990年代以降徐々に門戸が開かれ、大学院生を中心とした若手研究者が留学・調査に赴いています。その後、現地社会の政治的状況の変化に即した形で調査活動の種類と範囲に変動がみられるものの、大勢としては、新たな資料や視点による研究成果の蓄積が進んでいます。本研究会は、院生を含む若手を中心に、人文社会系だけでなく自然科学系の研究者もあわせて招聘し、地域(村落、地方社会、国家)を対象とする学際的な議論の場を設け、その総合的な把握を試みます。
つきましては、きたる11月3~4日の二日間、第一回の研究会を開催いたします。
今回は、カンボジア研究の特集です。カンボジアで実地調査が再開したのは、国連主導で統一選挙が実施された1993年以降です。以後、まずパイオニア的な実態解明の研究が進みました。1990年代末からは、政情の安定とグローバルな経済状況との接合を背景とした現地社会の変化にともない、研究の対象・スタイルの多様化が顕著になりました。また、王立文書館をはじめとした現地のアーカイブが活用されるようになり、新たな文書資料の発掘も進んでいます。
今回は、専門分野に限定を設けず、近年カンボジアに赴き現地調査を行ってきた(いる)研究者を広く集め、オープンなフォーラム形式で討議を行います。そして、今日のカンボジア研究の全体像を確認し、およびそれが捉えようとする(している)カンボジア社会の現在について意見を交換するだけでなく、独特な文化・歴史経験をもつ対象としての「カンボジア」の固有な性質と状況に関して発展的な議論を生みだすことをめざします。【プログラム】
11月3日(土) | |
1:30- 2:00 |
趣旨説明など |
2:05- 2:45 |
神田真紀子(東京大学大学院 人文社会研究科 博士課程) 「保護領政権下のベトナム人リクルートについての一考察」 |
2:50- 3:30 |
山田裕史(上智大学大学院 外国語学研究科 博士後期課程) 「カンボジア人民党による「一党支配型」権威主義体制の構築: パリ和平協定後 の「国家政党」への変容」 |
3:35- 4:15 |
松井生子(広島大学大学院 社会科学研究科 博士後期課程) 「カンボジアの地方権力とベトナム人 :Prey Veng州Peam Chor郡B村の事例から」 |
4:20- 5:00 |
朝日由実子(上智大学大学院 外国語学研究科 博士後期課程) 「カンボジアにおける伝統染織関連産業の興隆: 消費社会化、グローバル化によ る影響を中心として」 |
5:05- 5:45 |
正楽藍(神戸大学大学院 国際協力研究科 学術推進研究員) 「カンボジアの教育発展: 基礎教育拡充と学校教育をめぐる諸課題」 |
5:50- 6:20 |
討議 |
6:30- | 懇親会 |
11月4日(日) | |
9:40- 10:20 |
小林知(京都大学東南アジア研究所) 「再生から変容へ: ポル・ポト時代以後のカンボジア農村社会の復興について」 |
10:25- 11:05 |
堀美菜(東京大学大学院 農学生命科学研究科 博士課程) 「トンレサープ湖における小規模漁業の役割: コンポントム州と コンポンチュナ ン州の事例」 |
11:10- 11:50 |
柳星口(上智大学アジア文化研究所 客員研究員) 「カンボジアにおける漁業紛争と漁業改革: 1990年代以降のトンレー・サープ湖 地域の事例を中心として」 |
11:55- 12:35 |
野口博史(南山大学総合政策学部) 「カンボジア歴史地域調査報告: 調査概念と方法論を中心として、2004-2007年」 |
12:40- 13:30 |
討議・総括 |
京都大学アフリカ地域研究資料センター
第147回アフリカ地域研究会
日 時:2007年11月1日(木)15:00 ~ 17:00
場 所:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
(京都市左京区吉田下阿達町46)
東棟2階第一セミナー室(207号室)
演 題:アフリカ農村における遺伝資源と生計:バイオヴァーシティ・インターナショナルのケニアにおける経験
講 師:パトリック・ムニャオ・マウンドゥ博士
(バイオヴァーシティ・インターナショナル研究員)
要 旨:
バイオヴァーシティ・インターナショナル(前IPGRI)は、作物の多様性保全および、その多様性を維持・利用してきた農家の生計向上を、多くのパートナーとの協力の下、進めています。過去数年にわたり、バイオヴァーシティ・インターナショナルは、ケニアにおいて、「ヒョウタンの多様性とその利用方法に関する伝統知識のドキュメンテイション」および「低利用伝統野菜の消費振興プロジェクト」を農民と協力して実施してきました。遺伝資源の農民参加型管理・保全と農民の生計向上を同時に達成した成功事例として高い評価を得ている、 これらふたつのプロジェクトの活動内容と成功の要因について報告します。
日 時:2007月10月25日(木)午後3時~午後6時
場 所:京都大学東南アジア研究所 バンコク連絡事務所
発表者:川澄厚志(東洋大学大学院国際地域学研究科博士後期課程
Coomunity Organizations Development Instituteインターン)
「タイの都市スラムにおける小規模住民組織を通したコミュニティ開発に関する研究」
Study on the Small Neighborhood Groups in Participatory Approach to
Community Development of Urban Poor in Thailand
【要旨】
本研究で対象としたタイでは、2003年にCODI(Community Organizations
Development Institute)の支援を受け、全国の都市貧困層コミュニティ2千地区の
住環境整備を行うことを目的に、バーン・マンコン・プログラム(BMP)が開始さ
れた。この大規模な参加型の開発事業の中で、新たな開発方式として、バンコクのボンガイ地区など、全国にある数地区において開発過程で小規模な住民組織を組織化して事業を実施している点に着目した。コミュニティを対象にした再開発、修復型開発のいずれにおいても、従来はコミュニティ全体をひとまとまりとした開発がなされることが多い。この場合、全体の合意をどのように形成するかが課題であり、ともすれば行政機関やリーダーシップによるトップダウンが先行しがちである。以上の点を踏まえ、本研究は、住環境整備を目的としたコミュニティ開発方式における小規模な住民織の組織化過程、役割、特性について、セルフヘルプによる住環境整備事業が実施された事例を中心に計画論的視点から考察する。
発表者:吉田圭助(東洋大学大学院国際地域学研究科博士前期課程2年
「タイの都市貧困層におけるコミュニティ開発と社会移動に関する研究」
Study on the Social mobility of community development in Urban Poor
Communities of Bangkok, Thailand
【要旨】
スラム・スクォッター地区における住民の生活は、家族構成のうち稼ぎ手が多いことに対し、職業が日雇い労働や商店の経営といったインフォーマルセクターに従事している場合が多く、世帯での収入が少なく安定しない生活を余儀なくされている。そういった背景の下、以前はスラム・スクォッター地区であったがCODI主導のBaan Mankon Programを実施し、コミュニティ全体での住環境整備事業が行われ学歴や職業の視点から社会移動が起きていると考えられる地域を対象地区(C地区)と選定し、都市貧困層コミュニティからの社会移動が起こる可能性を追求する研究を行っている。
【要旨】
Tropical forests are one important component of the global carbon (C) cycle. Changes in the carbon standing stock of the tree reflect the balance between growth and mortality (including harvesting) and determine the status of forest as a carbon sink or source. Evaluating the carbon sink function of the tropical forest and confirming the sustainability of wood production is the main goal of the carbon flow analysis project. In this research, we will focus on establishing the data of annual biomass production of acacia plantation forest in tropical area and also relating the effect of the environment constraint to the annual tree growth. This research is performed in cooperation with a tree plantation company called PT Musi Hutan Persada (PT MHP) in South Sumatra Indonesia, which has managed an Acacia mangium plantation forest of 190 000 ha. The research field area is acacia plantation at Unit V of PT MHP, which is around 9 300 ha. We use long-term inventory data collected by PT MHP. The expected outcomes of this research are following; estimation data of standing tree volume, annual increment, the annual/total biomass production at unit V and annual tree growth relation to the data of environment constraint (temperature, rainfall, etc).
Future perspectives such as soil analysis, carbon flow analysis relating to harvesting wood as carbon pool, carbon balance between atmosphere and arbosphere and from soil to atmosphere, can be further analyzed to get a better understanding of the global carbon cycle.
本GCOEプログラムの次世代研究イニシアティブによる助成を受けている、Ragil Widyoriniさんによる今年度の研究計画の発表会。研究対象となるMHP社のアカシアマンギウム産業植林地は、イニシアティブ3「地域生存基盤の再生研究」のメインフィールドである。MHP社が提供しているアカシアマンギウムの成長に関する既存のデータから、産業林全体の炭素固定能力を明らかにするためにどのような研究アプローチを取ってゆくかについての発表があった。
文責 佐藤孝宏
日 時:2007月10月19日(金)午後4時~午後6時
場 所:東南アジア研究所 東棟2階第1教室
京都市左京区吉田下阿達町 46 川端通り荒神橋東詰め
テーマ:「台湾原住民およびバタン諸島におけるキダチトウガラシの呼称・利用方法」
話題提供者:山本宗太(京都大学大学院農学研究科)
【要旨】
キダチトウガラシ(Capsicum frutescens L.)は多年生の半灌木で、樹高は0.5~2m、果実は1~5cmの紡錘形で、食べると非常に辛く、独特の香りをもつ。キダチトウガラシは中南米原産であるが、現在では熱帯・亜熱帯の幅広い地域に分布している。
東南アジア・東アジアでは、キダチトウガラシは市場で大量に取引されず、主にホームガーデンで栽培されており、在来品種に様々な変異があることが知られていたが、これまでその分布に関する研究報告はなかった。
発表者はこれまで、形態的特徴の違い及びアイソザイム分析によって、東南アジア・東アジアに分布するキダチトウガラシの系統分類をおこなってきた。その結果、南西諸島で採集した系統はインドネシアで採集した数系統と近縁であることが示された。しかし、南西諸島とインドネシアの中間に位置する島嶼部において、キダチトウガラシの分布や利用方法などに関する情報が非常に少なかった。
本発表では、台湾(特に台湾原住民)とフィリピンのバタン諸島におけるキダチトウガラシの呼称・分布・利用方法などの現地調査結果を報告する。これまでの栽培植物の研究は遺伝資源・文化資源ともに原産地、あるいは原産地の周辺地域における研究が多いが、新大陸起源の栽培植物が旧大陸の文化要素にどのように取り込まれているのかをみていきたい。
問合せ先:
佐々木綾子 京都大学大学院農学研究科
Tel. 075-753-6361 mailto: sasaki22@kais.kyoto-u.ac.jp
小坂康之 京都大学東南アジア研究所
Tel. 075-753-7333 mailto: kosaka@cseas.kyoto-u.ac.jp
田中耕司 京都大学地域研究統合情報センター
Tel. 075-753-9600(センター長室)、9603(代表)、7307(研究室)
mailto:kjtanaka@cias.kyoto-u.ac.jp
WEBSITE:http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/seana/
【要旨】
Google Earthとは何か。Google Earthで何ができるか。Webで提供される最先端の情報
技術Google Earthについて学び、地域研究への応用について意見交換する。また時間と空間という概念で地域を観る・解く際に必要なツール開発の現状と課題について検討するのが、本研究会の目的である。
Google Earthは、Web検索エンジンGoogle の検索技術と衛星航空写真、地図、地形や3Dモデルなどを組み合わせて、世界中の地理空間情報を提供するソフトウェアである。このGoogle Earthは、Google社が2005年6月に提供を開始、1年前には日本語版が誕生した。
米国カリフォルニア大学バークレイ校(UCB)では、Google Earthが種々の研究や教育に応用されている。本研究会では、UCBからECAI(Electronic Cultural Atlas Initiative)の情報技術を指導するHowie Lan氏を招聘し、Google Earthの詳細と先端的な活用について紹介いただき、地域研究への活用について議論する。
また、現在、HGIS(Humanities GIS)研究会や大学共同利用機関法人人間文化研究機構の研究情報資源共有化事業の一部として開発を進めている時空間をベースにした諸事象・現象を解析するツールHuMap(Humanities Map)、年表をベースにして諸事象・現象を解析するツールT2Map(Theme and Time Map)、および時空間情報処理に欠かせないデジタル地名辞書の開発の現状と応用について検討する。
【プログラム】 | ||
13:00-16:00 | Google Earth, Introduction and applications | |
Presentation: Howie Lan |
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16:00-17:30 | Introduction and demo of Geo-temporal Tools | |
Presentation: S. Hara and T. Sekino |
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17:30-18:00 | Discussion |
【要旨】
「文化」はどのようにして少数派を排除するための道具となってしまったのか?
排除と抑圧の道具と化している「文化」概念を、どのように解体し、あるいは代替する概念をつくり出していくか?
私は発表でこれらの課題に取り組む予定であるが、それに際して依拠するのはつぎの2点である。
1.フランスにおける移民第2世代に対する政治-文化的排除。
2.合衆国人類学における「文化」概念の、今から見れば誤ったとしかいえない定式化。
貧困その他の社会問題は、労働組合や市民団体等による社会運動を通じて回収されるというのが、社会学のメタ物語であった。ところが、今日ヨーロッパ各国で生じているのは、外国人移民とその子弟に対する文化の名による排除であり、これに対しては社会的アクターも、メタ物語も作り出すことができていない。この問題に対してどのような取り組みがなされており、どのような課題が積み残されているか、を検討することを通じて、「文化の諸問題にかかわる学」としての人類学について考えたい。
「地域研究アーカイブ」(基盤研究(S)「地域情報学の創出」)第4回研究会を下記の要領で開催いたします。今回は、東南アジアの景観分類、『熱帯デルタの農業発展』に始まり、『世界単位論』へと地域研究を牽引されてきた高谷好一先生をお招きし、近著『地域研究から自分学へ』(京都大学学術出版会、2006年)を中心に、ご自身の研究遍歴のみならず近未来の地域研究の展望についてお話ししていただきます。
この会合は、長年にわたって特定の地域および「地域研究」と格闘されてきた先達を「語り部」としてお招きして、過去および現在の「地域研究」における研究対象や研究方法の変遷や特徴を浮き彫りにし、その実践を未来への試金石、共有財とする試みのひとつです。とくに若い世代の方々には、大いに益するものと期待しております。
日 時:2007年10月6日(土)~7日(日)
場 所:大阪市立大学杉本キャンパス)
第1日 2006年10月6日(土曜日)
受付開始 9:30 1号館 1階
午前の部 10:00~12:30
<小パネル:1> 深刻化する都市環境とカースト/エスニシティ:
バングラデシュの清掃労働をめぐって
第1会場(1号館 128号教室)
司会:脇村 孝平
趣旨説明:野口 道彦
三宅 博之 「清掃労働をめぐる価値転換」
野口 道彦・佐藤 彰男 「清掃労働者の社会移動」
Iftekar Uddin Chowdhury 「Contemporary Dalit Issues in Bangladesh」
佐野 光彦 「清掃労働者の連帯の可能性:ダカ市清掃労働者組合などを事例にして」
坂本 真司 「清掃労働者コミュニティにおけるメディア文化の形成:
衛星TV放送の受容を中心に」
ディスカッサント:篠田 隆・高田 峰夫
<自由論題A>
第2会場(1号館 127号教室)
司会:矢野 道雄・藤井 正人
鈴木 孝典 「インド実在論学派における革新と保守:言語認識をめぐる2つの態度」
杉木 恒彦 「サンヴァラのhomaの体系」
北田 信 「北インドの音楽文献(サンスクリットとペルシア語)」
前島 訓子 「インドにおける『仏教の聖地』をめぐる議論とその展開:
『仏教の聖地』の地域的固有性の理解に向けて」
<自由論題B>
第3会場(1号館 122号教室)
司会:藤井 毅・南 真木人
木村 真希子 「森林村とトライブの土地喪失:アッサムの「トンギヤ」村を事例に」
榎木 美樹 「部族社会から近代社会へ:インドに居住する
亡命チベット人のアイデンティティ形成」
森田 剛光 「タカリーと弓:民族技術の伝統と変容」
澁谷 俊樹 「カーリー女神の変容と現在:『おぞましきもの』をめぐって」
ランチタイム 12:30~14:00
午後の部 14:00~16:30
<小パネル:2> 19世紀の南アジア文学にみる作者の内面の揺れ:変革期の多様性
第1会場(1号館 128号教室)
司会:水野 善文
趣旨説明:臼田 雅之
坂田 貞二 「ヒンディー語文人バーラテンドゥ・ハリシュチャンドラ(1850-1885)に
見られる揺れ:韻文によるクリシュナ神讃歌から、散文による民族像素描へ」
ディスカッサント:長崎 広子
松村 耕光 「ムハンマド・フサイン・アーザード(1830?1910)のウルドゥー詩改革論」
ディスカッサント:萩田 博
臼田 雅之 「ナショナリズム・叙事詩・抒情詩:タゴール登場のころのベンガル」
ディスカッサント:杉本 浄
石田 英明 「近代マラーティー文学とKeshavsut(1866-1905)」
ディスカッサント:小磯 千尋
(補足コメント)マラヤーラム文学の場合:粟屋 利江
(補足コメント)サンスクリット学者の場合:水野 善文
<自由論題C>
第2会場(1号館 127号教室)
司会:長崎 暢子・三宅 博之
七五三 泰輔 「環境保全政策の実践における生産資源をめぐる文化の政治:
バングラデシュ、ハカルキ・ハオールにおける環境保全プロジェクトを事例として
宮本 万里 「ブータンの自然国立公園における環境保護政策と地域社会:
『環境にやさしい』生活様式をめぐる文化の政治」
石坂 晋哉 「環境運動におけるガンディー主義者の行脚と断食:
スンダルラール・バフグナーの「昇華」の哲学と政治」
石井 一也 「グローバル化時代におけるガンディー思想の意義:
アマルティア・K・センによる批判を超えて」
<自由論題D>
第3会場(1号館 122号教室)
司会:藤田 幸一・吉田 修
佐藤 誠 「インド・オリッサ州における染織業生産者世帯の家計と生活戦略」
今藤 綾子 「村落パンチャーヤット議員の政治活動に関する一考察:
ケーララ州タリクラム村におけるインタビュー調査から」
Farhat Tasnim 「Civil Society in Bangladesh:
Vibrant but not Vigorous」
山本 真弓 「1964年ブータン首相暗殺事件とチベット独立運動」
16:40~17:20 会員総会 第1会場 (1号館 128号教室)
17:30~19:30 懇親会 高原記念会館
第2日 2007年10月7日(日曜日)
午前の部 10:00~12:30
<小パネル:3> 現代インド経済の課題と展望
第1会場(1号館 128号教室)
司会:宇佐 美好文
趣旨説明:佐藤 隆広
馬場 敏幸 「インドの金型産業」
上池 あつ子 「インドの製薬産業」
杉本 大三 「インドの農業」
佐藤 隆広 「インドのマクロ経済」
福味 敦 「インドの財政政策」
久保 彰宏 「インドの金融政策」
ディスカッサント:絵所 秀紀
<自由論題E>
第2会場(1号館 127号教室)
司会:井坂 理穂・水島 司
小嶋 常喜 「植民地期インドにおける農民の登場:
キサーン・サバー運動の社会史的系譜」
五十嵐 理奈 「バングラデシュ美術の成立に果たしたチッタゴン派の役割」
川津 千佳 「植民地期インド軍のインド化とナショナリズム」
土本 恵介 「ジンナーの政治活動について:1906年から1916年を中心に」
<自由論題F>
第3会場(1号館 122号教室)
司会:押川 文子
加瀬川 雅人 「グローバル状況下の民族医療における知識の新たな位置付け:
インド・ケーララ州の事例から」
菅野 美佐子 「女性は変化をいかに語るか:
ウッタル・プラデーシュ州農村社会における参加型開発とジェンダー規範の変容」
小原 優貴 「初等教育の普及における政府と住民組織の連携:
インドのオルタナティブ教育の考察から」
ランチタイム 12:30~13:30
午後の部 13:30~17:00 大会場 (7号館 704号室)
<全体シンポジウム> 南アジア・日本・世界:グローバル化と南アジア認識の変貌
司会:秋田 茂・山根 聡 趣旨説明:脇村 孝平
片岡 啓 「インド学 」
中島 岳志 「思想」
黒崎 卓 「経済」
三輪 博樹 「政治」
大石 高志 「歴史」
田辺 明生 「社会」
ディスカッサント:辛島 昇・中村 尚司
【 趣旨 】
<全体シンポジウム> 学会創立20周年企画「南アジア・日本・世界:グローバル化と南アジア認識の変貌」
かつて南アジアは、わが国の人びとにとって、「植民地支配」、「貧困」、「後進性」、「異文化」、「悠久」など様々なイメージ・観念を喚起する非常に個性的な文化・文明ではあったけれども、あくまでも世界における周縁に位置づけられる存在に過ぎなかった。しかし、1990年代以降、グローバル化の一層の進展とともに、私たちの南アジア認識にも大きな転換が訪れた。南アジアは、インドの経済的台頭や世界各地における南アジア系ディアスポラの活躍などもあって、個性的ではあるけれども周縁的な文化・文明というのに止まらず、グローバル化した世界における基軸的な存在として姿を現そうとしている。このことは、現在の南アジア世界への認識だけではなく、私たちが南アジアの歴史をどのように捉えるのかという、歴史像の問題にすら影響を及ぼそうとしている。
学会創立20周年を迎えるにあたって、本シンポジウムが、このような南アジア認識の変貌を、今日までのわが国における南アジア認識の変遷を辿りつつ、位置づける試みとなれば幸いである。したがって、報告者の方々には、でき得る限り、今日までの南アジア研究の精神史的文脈にも論及していただくことをお願いしている。報告者には、今日の南アジア認識の変貌に関して鋭敏な感覚を有する少壮の研究者にお願いし、他方でコメンテーターとして、長年にわたって南アジアを見つめてこられた先学の先生にご登場いただくことになる。
報告者の方々には、それぞれの分野に関して、(1)わが国の南アジア研究におけるintellectual
historyを振り返りつつ、(2)現代(1990年代半ば以降)における南アジア認識の変貌を語っていただくこと。逆に言い換えると、(1)現代(1990年代半ば以降)における南アジア認識の変貌を語っていただきつつ、(2)わが国の南アジア研究におけるintellectual
historyを振り返っていただくことをお願いしている。
「東南アジアの社会と文化研究会」を、以下のとおり開催いたします。今回は、東南アジア学会関西例会と共催です。 オープンな研究会ですので、ふるってご参集くださるようお願いいたします。
◆日時
2007年9月21日(金) 16:00-18:00
◆場所
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
中央総合研究棟(旧・工学部4号館)4階 会議室(AA447)
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/about/access.html
◆話題提供者
飯國有佳子氏(国立民族学博物館・外来研究員)
◆司会(コメント)
加藤眞理子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
◆演題
「東南アジアにおける宗教とジェンダー研究の再考 ― ビルマにおける宗教実践の事例から― 」
◆要旨
東南アジアのジェンダーを語る際、よく聞かれるのは、女性の地位が相対的に高いという説明である。その際、経済活動への参加度、親族組織、相続形態などが、地位の高さを示す事例として持ち出されてきた。一方で、仏教やイスラームなど宗教の如何を問わず、女性は宗教的・象徴的に劣位におかれているとも言われている。
このうち、前者のように女性の地位の高さを強調する場合には、宗教上の劣位は触れられないか、例外扱いされてきた。他方、女性の宗教上の劣位を主張する後者の研究では、教理的理解が前面に押し出されてきた。そのため、宗教が実践される場におけるジェンダーは捨象されることが多かった。また、教理を過度に重視するあまり、政治や経済など、宗教とは直接かかわらない場のジェンダーをも、教理によって説明しようとする試みもみられた。ここから東南アジア、特に大陸部のジェンダー研究は宗教の適切な位置づけに苦慮してきたと言うことができるだろう。しかし、当該社会のジェンダーを考える上で、宗教は外すことのできない重要なテーマのひとつである。ジェンダーと宗教をめぐるこうした問題を乗り越えるにはどうすればよいのだろうか?
本報告では、こうした問題への接近を試みるために、ビルマにおける女性の具体的な宗教実践を事例として取り上げる。なぜなら、これまでの宗教に関連するジェンダー研究の多くが、経典に見られるようなジェンダー規範に依拠するかたちで当該社会のジェンダーを考えてきた。そのために、女性の具体的な宗教的行為には十分な光が当てられず、結果として宗教を適切に位置づけることができなかったと考えられるからである。さらに、女性の宗教実践に注目する際には、その実践を安易に経典を持ち出して説明するのではなく、それらを規範とした実践を行う個々人の立場から捉える必要があるだろう。発表では、宗教的・社会的権威の承認が最も顕著なかたちで現れる儀礼の場における実践と、それをとりまく日常的な場における女性の行動や語りを扱うことで、個々の女性がいかに宗教的・社会的権威に服従し、それをどのように読み替え、時に権威に対抗するような実践を行っているのかを明らかにする。
このように、儀礼や日常生活などの具体的な宗教実践の場において、女性がいかに宗教を生きているのかに着目することを通して、これまでの東南アジア大陸部における宗教とジェンダー研究の再考を試みてみたい。
研究会ホームページ
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/kenkyuukatsudou/syakai-bunka/index.html
[研究会世話人/事務局]
杉島敬志 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
林 行夫 (京都大学地域研究統合情報センター)
速水洋子 (京都大学東南アジア研究所)
伊藤正子 (京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
王 柳蘭 (京都大学大学院・アジアアフリカ地域研究研究科)
備考
・事前の参加予約は必要ありません。
・当日は、資料代として100円をいただきます。
UCLAアジア・センター所長のビン・ウォン教授を招き、グローバルCOEの構想を理解していただいた上で、パラダイム形成への示唆となるような報告をお願いした。
教授は、China Transformed: Historical Change and the Limits of European Experience (1997)における財政・公共政策の歴史的理解をふまえて18世紀から現代までの議論を概観し、ヨーロッパで成立した主権国家やその上に作られた地域単 位としてのEUが、それぞれの地域住民の余剰を吸収して再配分する場合、その政治的思想的な根拠は歴史的径路依存性にもとづいたものであり、他の地域にも そのまま当てはまるような普遍性を持つわけではないことを指摘するとともに、それが世界政府の存在しない状況の下での世界公共財の配分の問題の困難さにも つながっていると論じた。
The Coalition for Rainforest Nationsの事例がひかれ、世界公共財とは区別された「地域公共財」の可能性についても議論された。
京都大学アフリカ地域研究資料センター
第146回アフリカ地域研究会
日 時:2007年7月28日(土)15:00 ~ 17:00
場 所:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(京都市左京区吉田本町)工学部4号館大会議室(447号室)
演 題:共生をめぐる秩序構造研究にむけて-ウガンダ・アルバート湖岸の漁村の事例から
(Towards a Study of the Structural Order of Co-existence:
The Case of a Fishing Village on the Lake Albert, Uganda)
講 師:田原範子(四天王寺国際仏教大学・短期大学部 准教授)
Noriko Tahara
(Associate Professor, International Buddhist University)
コメンテーター:
中山節子(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)
Setsuko Nakayama(ASAFAS, Kyoto University)
要 旨:
異なる言葉、異なる行動様式をもつ多民族が混住し、交流を余儀なくされる地において、日常経験の何が正当化され、生活の論理はどのように構成されていくのか。
アルバート湖岸の漁村ルンガは、ニョロ人が最大民族集団であるホイマ県に位置しながらもウガンダの西ナイル地域、およびコンゴ民主共和国からの移民アルル人が住民の大半を占める「移民コミュニティ」である。ここは1960年代に誕生し1980年代後半にウガンダの地方政治組織と市場に組み込まれた。ここは国家/市場/移民ネットワークという構造的制度的文脈を背景としながら、多様な社会空間が越境し絶え間なく編成されている場である。
生活の局面において、アルル人/ニョロ人、コンゴ人/ウガンダ人は制度化された差異のみならず、ときに感情的齟齬を生じさせるものとして言及され、承認される。にもかかわらず、生産関係、つまり生産(漁労)と分配(魚の流通)をとおして構築される交流はそうした差異を超越する。生産関係のもたらす生活の共生はいかなる社会秩序を構築するのか。2001年より断続的に実施しているフィールドワークの資料より考察を行いたい。
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この研究会は日本アフリカ学会関西支部との共催です。いつもの研究会と「曜日」と「場所」が違いますのでご注意下さい。
アフリカ地域研究会の案内をFAXおよびE-mail でお送りしています。ご希望の方は下記にお知らせ下さい。
連絡先:京都大学アフリカ地域研究資料センター、宮本可奈子
TEL:075-753-7822 FAX:075-753-9191
E-mail:kanako@jambo.africa.kyoto-u.ac.jp
2006年5月に発生したジャワ島中部地震で大規模な被害を受けたジョグジャカルタ近郊の農村地帯を、地域研究統合 情報センターの山本博之さんや東京大学の西芳実さんらと見て歩いた。震災被害が最も激しかったイモギリ郡周辺では、まだ瓦礫のまま手付かずの住宅もあった が、すでに多くの農村では震災以前の状況に回復するための復興過程を経て、より災害に強い生活基盤の構築を目指す開発過程へと移行しているように見受けら れた。震災直後に設置された国連人道問題調整事務所(UN OCHA)もすでに引き払われていた。
スマトラ沖地震津波災害の直後からアチェの復興をつぶさに観察されてきた山本さんと西さんによると、アチェとジョグジャカルタでは復興過程に大きな違いが 見られるという。前者では、少なくとも現地社会は、外部からの支援を全面的に受け入れようとしたのに対して、後者では、復興過程の主役は現地の行政組織や 住民であり、外部からの支援はそれをサポートするという位置づけだった。その背景の一つとして、アチェの場合には津波によって住宅やインフラがいわば完全 に破壊されたのに対して、ジョグジャカルタの場合には、震災の数日後には送電が復活するなど、物的な被害が限定的であったという被害状況の違いを挙げるこ とができるが、同時に、震災を契機として外部世界とのつながりを再強化しようとしたアチェと内部社会の結束を再確認しようとしたジョグジャカルタという社 会的な違いも想定できる、ということだった。
工学技術がいくら進歩しても、地震や洪水などの大規模自然災害を完全に防ぐことは不可能である。したがって自然災害からの復興は人類共通の課題である。し かし、いかなる復興過程が適したものであるのかは、地域の歩んできた歴史や地域社会に内在する組織や制度によって異なる。
(文責 河野)