研究概要
研究テーマ: 「東アフリカ小農社会における、農業の商業化にともなう社会関係の再編」
私の研究関心は、東アフリカの小農社会における社会経済の動態を、実際の村の人びとのあいだでの生活とその変容というミクロな視点からみていくことです。
研究の対象は、ウガンダ東部のエルゴン山に住むサビニという山地農耕民です。彼らは、20世紀なかばごろまではウシとヤギの飼養を中心にして、自給的な 農耕をいとなむ生業のパターンでした。20世紀後半に、バナナやトウモロコシ、インゲンマメが自給作物としても商品作物としても普及・定着し、家畜飼養よ りも作物栽培が中心の生業パターンに変化しました。現在では村のほとんどの世帯が毎年100kg以上のトウモロコシを村の外に出荷しています。
このように生業のパターンの変化によって、また商品作物などを通して市場経済に接続することによって、人びとの行動や社会関係の持ち方、そしてそれらと 密接な関係にある村の生活におけるさまざまな「了解事項」(これを「社会規範」のように呼びます)はどのように変化するのでしょうか。この疑問に答えるべ く、私は以下3つの具体的なトピックをとりあげます。(1)家畜の共同放牧と共同管理の労働編成、(2)耕地での労働の組織原理、(3)土地への権利をめ ぐる社会規範の成り立ち、です。これらについて、現在の状況を詳細に調査するとともに、文献と聞き取りを手がかりに20世紀後半をとおしての変化を再構成 し、それらの変化が人びとの生活世界にもたらした意味をさぐっていくことが研究の課題です。
これらの研究課題は、これから博士論文にまとめられる予定です。そして、これらの研究内容を、ゆくゆくは私のもっと根源的な問題意識、すなわち、われわれ の暮らす「近代」世界において、あたりまえのように人と人、社会集団や社会組織どうしを媒介しているかのように言われる「法」や「貨幣」というメディアを 批判的に検討すること、に繋げていきたいと思っています。たしかにわれわれは、自分たちの社会に「法」や「貨幣」が大きく関わっていることを否定できませ ん。しかし、日常的にはいろんな文脈において、われわれはそのつどそれらと距離をとり、さまざまな解釈をほどこしてそれらのかかわる状況を処理したり、と きには「対峙」したりしているはずなのです。が、そのような大問題に接近していくのはまだまだ将来のことです…。
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主な業績:
■ 著書 (単著、共著、編著、共編著)
■ 論稿
■ プロシーディング・書評・コラムなど
■ 学会・研究会・シンポジウム発表
白石壮一郎 2012年2月 「融合・共同研究の現場 ― サブサハラアフリカ地域での制度と実際」、東京外国語大学 共同研究プロジェクト「社会開発分野におけるフィールドワークの技術的融合を目指して」第7回研究会(於 東京外国語大学本郷サテライト) [参照]
白石壮一郎 2011年10月 「土地争議における氏族制・村評議会制・地方政治権力―ウガンダ東部、サビニ社会での調停手法から〈デモク ラシー〉を考える」、国立民族学博物館 共同研究「アジア・アフリカ地域社会における<デモクラシー>の人類学―参加・運動・ガバナンス」 第6回研究会 (於国立民族学博物館)
SHIRAISHI Soichiro & Kiprotich M. Solomon September, 2011 Asking about Land Issues: Unveiling Hidden Agendas? Approaches and Methodologies of Field Research in Africa, JSPS Nairobi Research Station, Kenya.
白石壮一郎 2011年3月 「『文化の権利、幸福への権利―人類学から考える』をめぐって」、関西学院大学先端社会研究所2010年度第10回定期研究会 (於 関西学院大学上ヶ原キャンパス) [参照]
白石壮一郎 2011年3月 「〈場〉のダイナミズムから考える―支援のフィールドワークを深めたい人へ」、日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センター小研究会「『場』から拓く支援とフィールドワーク」 (於 日本福祉大学名古屋キャンパス)
白石壮一郎 2010年11月 「イントロダクション」、第83回日本社会学会大会 若手企画テーマ部会(1)「グローバリゼーションと移動・定住のフロンティアの現在」(於名古屋大学) [参照]
■ 学位論文
■ 講演
■ 報告書
■ 対談・座談 など
■ 雑誌の企画・編集
■ 略歴
■ 研究資金
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