Custom Search

Language

Contents

アンケート

本サイトをおとずれた理由

本サイトをおとずれた理由は何ですか?

  •  プログラム概要閲覧
  •  研究会情報
  •  プログラムメンバー
  •  フィールドステーション
  •  報告閲覧
  •  プログラム成果閲覧
  •  写真閲覧
  •  公募
  •  その他
このアンケートにはさらにもう 2 件、質問があります。
結果
他のアンケートを見る | 96 voters | 0 コメント

ログイン

ログイン

「アフリカの半乾燥地域における地域社会の潜在力」 [ イニシアティブ2・4/人為攪乱研究会 合同研究会 ] (イニシアティブ4 研究会)

日 時:2010年7月13日(火) 14:00~16:00
場 所:京都大学 東南アジア研究所 稲盛記念館3F小会議室Ⅱ

http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/about/access_ja.html
 

GCOEイニシアティブ4とイニシアティブ2(人為攪乱研究会)との共催です。

 

発表者1
平井將公(京都大学東南アジア研究所GCOE研究員)
タイトル:「人口稠密地域における自然利用の技術と制度―セネガルのセレール 社会の事例」
 

発表者2
村尾るみこ(日本学術振興会特別研究員PD)
タイトル:「ザンビア西部州における生計活動の再編―移動性の高い女性による 現金稼得から―」

 

【趣旨】
アフリカ大陸の大部分を占める半乾燥地域において、人びとは不安定な自然条件 や、政治・経済環境の激しい変化に生計活動を制約されながらも、それらへした たかに適応してきた側面が少なくない。本研究会では、そうした地域社会の「潜 在力」について自然資源を活用する技術や、社会組織の流動性といった観点から 多角的に検討する。平井は、人口稠密な地域を長年にわたって保持してきた西アフリカのセレール社 会を取り上げ、その自然利用の特性について考察する。セレールは人口増加や市 場経済化の進行にともなって農牧業を有機的に結合し、またその過程では飼肥料 木の優占する植生を耕地上に形成し、維持してきた。この事例をもとに、自然資 源の回復力を最大限に引き出しながら、生産性を高め、社会変化に対応する半乾 燥地の農業について考える。村尾は、南部アフリカの農村における「紛争避難民」の生計維持活動について報 告する。Displacementは、生計破綻の要因として論じられることが多いが、しか しアフリカ社会においては、人口の移動性がむしろ環境制約下での生計維持を可 能にしている局面も少なくない。村尾はさらに「移動性」の別の側面、すなわち 頻繁に結婚・離婚を繰り返しながら村を出入りする女性たちに注目することで、 流動性の高い社会における女性の生計維持の問題について検討する。


 

【活動の記録】
アフリカの半乾燥地域では、暮らしにかかわる生態・社会・経済のいずれの要素をとっても不確実性が高い。本研究会では、そうした地域に暮らす人びとが、生計を維持するうえでの制約をいかに克服しているのかについて、西アフリカのセネガルと南部アフリカのザンビアの事例から検討された。

一人目の発表者の平井は、セネガル中西部において人口稠密な地域を保持してきた、農耕民セレールの資源利用の持続性について技術と制度の観点から検討した。報告によると、セレールは土地不足を重要課題としてきたが、彼らは農業と牧畜を耕地内で結合させ、また飼肥料木として知られるFaidherbia albidaが優占する人為植生を耕地に形成することで、土地生産性を高めて対処してきた。しかし、飼料や燃料として消費されるこのF.albidaもまた、近年、人口増加との関連から稀少化の傾向にあるという。そこで、人びとは切枝技術(pollarding)やその運用にかかわる社会制度を精緻化しながら、F.albidaの利用を持続化させている。また、F.albidaの大規模な枯死が招かれないのは、技術や制度の精緻化だけでなく、生計における同種の重要性や価値が成員間で共有されている点にも基づいていると指摘された。半乾燥地域では、人間による植物利用が砂漠化の原因とされがちだが、セレール社会が例示するのは、むしろ土地や植生への積極的な人為介入こそが、植生環境を維持しうるということであった。
これに対し、フロアからは技術や制度の形成過程に関する質問が寄せられた。村落内部における成員間の社会関係や、村落外部との交渉史をふまえながら、今後それを明らかにすることが、農業技術の在来性を理解するうえで課題になると思われた。

二人目の発表者の村尾は、1960年代に始まったアンゴラ内戦を避けてザンビア西部州へ移動した移住民の生計維持について、社会組織の再編と女性の現金獲得活動との関係から検討した。それによると、移住民は親族・婚姻関係に基づく従来の共住単位(limbo)を移住先においても編成していた。さらに今日では従来limbo内で生じなかったキャッサバの不足に対して、limbo内での互酬関係をその外の関係と合わせて使い分けることで、生計を安定化しているという。また、村のほぼすべての世帯の生計を支えるキャッサバ販売は、結婚と離婚を契機としてlimbo間を頻繁に移動する女性が担っていることが指摘された。すなわち、女性の移動とともに、キャッサバの販売をめぐる互助的ネットワークは拡大・縮小を伴い再構築されているのである。これまでの難民研究では移住が生計基盤の崩壊につながると考えられてきたが、それに対し本発表では、そのリスクが移住民女性の流動性と移住民固有の社会組織内外での互酬性ネットワーク再構築によって緩和されていることが示された。
フロアからは、limboのもつ社会的特質や生計保障機能に関する質問が多く寄せられ、今後、互助的ネットワークの拡大と共同体内への貨幣流入との関連性を明らかにすることが、リスク緩和の可能性をより明確にするうえで課題になるとされた。


(文責 平井將公)