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  自然と人との関係を考えるG-COEイニシアティブ2班の今後2年間の研究活動は、個別の自然資源の最大限の利用を図るのではなく、Biosphere全体の機能を高めることで持続的なHumanosphereを構築するための技術と制度に焦点をあてる。

  地球の誕生以来、生物そのものが生物の生命活動を活発にするための基盤を形成してきた。Geosphereの変化に大きく影響されながらも生物は、その生命基盤を支える大気の組成や水、エネルギーの状態を決定し、それらの活発な循環の中でBiosphereを形成した。Biosphereの中で生物はさまざまな絶滅と進化を繰り返し、多様な生物相を形成するに至った。

  生物が多様化するこのプロセスの中で人類は誕生した。自然の中から自らの生存にとって有用な動植物を選択し、自然のメカニズムのある特定の機能に着目して利用することで、食料をはじめとする有用資源を確保できるようになった。人口が増加し、身近な地域の自然資源が生存にとって十分でなくなると新たな自然資源を求めて人類は外延的に拡散し、その結果、人類は地球上の各地に急速に分布するようになった。
多様な生物相の存在と活発な大気・水・エネルギー循環は、人類の初期の急速な増加と拡散にとって有利に働いたであろう。仮に生物相が単純で安定している場合、その環境に特化した単純な生存戦略を持つ生物のほうが生存にとって有利なはずである。しかし多様な生物相の存在と活発な大気・水・エネルギーの循環の中では、時間的空間的に多様な生存戦略が必要とされ、高度に発達した知能を持つ人類が比較優位を持つことができる。Biosphereが作り出した多様な生物相と活発な物質・エネルギー循環の存在こそが人類の基本的な生存基盤であるといえる。

  人口増加と世界中への拡散のプロセスの中で、人類は自然とかかわるための技術と制度を高度に発達させた。当初人類は、多様な生物相の中で自らの生存にとって有用な動植物を選択し、活発な物質・エネルギー循環の中のある特定の機能に着目して利用し、自らの生存基盤を確保していた。前者の例は、さまざまな有用植物の栽培化や野生の動物の家畜化であり、後者の例は、広大な原生林の中で一部の植生を攪乱し、攪乱後の植生の最初に現れる一年生草本の急激な生産力を利用した焼畑耕作や、雨によって削られた土砂が低地に肥沃な土壌を形成し毎年の洪水によって栄養分が供給されることを利用した水田耕作などである。

  人口増加と世界中への拡散のプロセスの中で人類が発達させた、自然とのかかわりに関する技術と制度の方向性も、プレ農耕時代のそれと根本的な違いはない。特定の有用形質のもつ力を最大限発揮させるための育種技術はハイブリッド種を生み出し、現在では、分子レベルでの選抜も可能となった。自然の持つ特定の機能を最大限に利用するために、植生の遷移や物質・エネルギーの循環は極端に人為的に制御されるようになった。18世紀以降の化石燃料の利用はこうした変化を急速に推し進めることになったが、自然と人のかかわりの方向性から見ると、決して根本的な変化を引き起こした出来事ではなかった。人類が自然の中から自らの生存にとって有用な動植物を選択し自然のメカニズムのある特定の機能に着目して利用するという点において、プレ農耕時代から現代まで大きな方向性の転換は見られなかったといえる。

  化石燃料の利用は、自然と人の関係という観点から見ると、急激な変化を世界中にもたらした点がより重要であった。具体的には、変化が急激であったため、人為的なインパクトによってBiosphereの中でこれまでに作り出されてきた多様な生物相が急速に失われ、活発だった物質・エネルギー循環にも大きな影響がでているということが、地球上の多くの人にとって明らかになってきた。地球環境科学に関連するほとんどの分野で、生物多様性や物質・エネルギー循環に対する人為的なインパクトが現在、重要な研究対象となっている。
すでに述べたように、Biosphereが作り出した多様な生物相と活発な物質・エネルギー循環の存在こそが人類の基本的な生存基盤であった、この中で人類は、自らの生存にとって有用な動植物を選択し、自然のメカニズムのある特定の機能に着目して利用し、そのための技術と制度を発達させてきた。しかし現在、これまで人類が前提としてきた基本的な生存基盤に大きな変化が起きていることが明らかになりつつあり、プレ農耕時代以降初めて、自然とのかかわりに関する技術と制度の方向性を変革する必要に迫られている。

  新しい自然と人とのかかわりの方向性を考察するために、今後、以下の三つのシナリオを比較しながら検討する。新しいパラダイムとしてもっとも考えられうるのは第三のシナリオである。

  1. 現状維持型シナリオ
      従来と同様、自らの生存にとって有用な動植物を選択し、自然のメカニズムのある特定の機能に着目して利用する方向性を維持するため、特定動植物、自然の特定の機能の利用をさらに精緻化する方向で発展させる。このシナリオでは、現在人類が手にしている限られた資源の有用性の探索や自然の特定の機能の利用をさらに精緻化するための科学技術が前提となる。ある特定の資源やエネルギーが枯渇した場合、代替となるものを求めて、既知の資源の遺伝子レベルでの解析や、原子力利用のためのさらなる技術開発、宇宙利用のような外延的拡大を目指す。
     
  2. 自然回帰型シナリオ
      有用資源が限定され、物質・エネルギー循環が不安定であることを前提に、その中で、人類がプレ農耕時代以降に気づいてきた自然利用に立ち戻るシナリオ。自然の多様性が少なく、物質・エネルギー循環がかつてほど活発ではないため、それに応じて生産は縮小し、限られた生産の中で人類の生存を確保するための科学技術が求められる。
     
  3. 自然と人の共生シナリオ
      プレ農耕時代の人類による自然利用は、多様な生物相と活発な物質・エネルギー循環が前提とされていたが、それらの存在こそが、特定の資源利用や自然の特定の機能を利用することで生産力が最大化し、かつ、長期にわたって安定的な生産を確保するための重要な役割を果たしていたと仮定する。多様性が減少した自然の中では有用資源の利用可能性は低く、活発度の低い物質・エネルギー循環の中では自然の特定の機能の利用によって高い生産性を保つことができないからである。
    この仮定が妥当だとすると、現代以降の世界は、自然の中の特定の有用資源や特定の機能を利用するときに、それらをとりまく全体の生物相をより多様化したり、全体の物質・エネルギー循環をより活発化させたりする仕組みを、利用の中に組み込む必要がある。有用資源の利用を通じて全体の生物相の多様性を高める仕組み、自然の機能を利用することを通じて全体の機能を高める仕組み、生物相全体の多様性の中での個別生物の役割、自然全体の機能の中での個別の機能の役割、個別資源の持つ生産性ではなくBiosphereの中での生産性の評価等を明らかにし実現するための技術と制度が求められる。

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