inspectionFY2008
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1 1.はじめに 本プログラムは、アジア・アフリカ地域の持続的発展に関する学際的研究を、グローバルで長期的な視野から、多面的に行うために創出された。われわれは、アジア・アフリカの地域研究に携わる研究者と、先端技術の開発に関わる科学者との学問的対話を促進するために、「持続型生存基盤パラダイム」という新しい考え方を提案し、地球温暖化のアジア・アフリカの地域社会への影響といった緊急の課題に対応しつつ、ローカルな、あるいはリージョナルな持続的発展径路を追究したいと考える。 本プログラムの主幹部局である東南アジア研究所は、強い学際的な志向を持った京都大学の地域研究の伝統のなかで発展してきた。本プログラムは、アジア・アフリカ地域研究研究科が東南アジア研究所と協力して行った21世紀COEプログラム(2002-2007年)の成果を受け継ぎ、フィールドワークと臨地教育にもとづく大学院教育を継続するとともに、「持続型生存基盤コース」を新設し、若手研究者の養成を図る。さらに、生存圏研究所などから森林科学・木質科学、気象学・大気圏科学、物質循環論、エネルギー科学など「サステイナビリティ学」に関連するハードサイエンスの領域を加えて、地域研究における科学的研究の幅を広げる。それによって、先端科学技術の知識を、伝統的な地域研究を支えてきた生態学、政治学・経済学、社会学・人類学、歴史学、医学の知識と融合させ、これまでの体制よりもはるかに幅広い人文科学、社会科学、自然科学の諸分野につうじた地域研究の専門家や科学者を養成する。 2年目にあたる平成20年度の第一の目標は、研究活動を本格化し、中間的な成果を生み出すとともに、パラダイム形成の方向を見出すことだった。まず、広い学際性を維持しつつ共通の枠組を作るために、パラダイム研究会を12回、国際シンポジウム・セミナーを19回、その他、イニシアティブ研究会・ワークショップを多数主催・共催した。また、その成果を速報として公開するワーキングペーパー73冊を刊行した。さらに、新しいパラダイムの形成を現段階で総括した論文集を編集した。来年度前半に刊行の予定である。 もう一つの特筆すべき進展は、本プログラムの開始を契機として、大学院アジア・アフリカ地域研究研究科において、新しい専攻である「グローバル地域専攻」が設置され、そのなかに「持続型生存基盤論講座」が設置されたことである。新しい教授ポストが二つつくことになり、定員8名(新専攻全体)で2009年度からスタートした。 このように、共同研究によるパラダイム形成と人材育成のための制度改革を両輪とする本プログラムの構想は着実に進展している。次年度においては、上記論文集のほか、いくつかの本格的な研究成果を出すとともに、パラダイム形成の成果を東南アジアにおける森林プロジェクトなどの具体的な研究に反映させることによって、さらにその射程を広げていきたい。 平成21年5月31日 拠点リーダー 杉原 薫

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