inspectionFY2008
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34海外連携フィールドワーク 国内研究会での議論を受け、アジア・アフリカの現場で異分野の研究者が共通のテーマについて議論する場を持つため、海外連携フィールドワークを実施した。今年度は、ケニア北部とタイ北部・東北部を訪問した。ケニア北部を含む東アフリカの乾燥地帯では、ラクダなどの家畜放牧を生業とする民族が居住する。中でもレンディーレと呼ばれる人びとは特に乾燥の厳しい条件下で暮らし、生活のほとんどを牧畜に依存する。レンディーレの地を訪問し、気象条件の不安定性、放牧形態、放牧のための労働力を提供する堅固な年齢階梯組織、周辺民族との軋轢と協力をテーマとして議論した。タイでは、北部と東北部を訪問した。北部では、お茶という世界的な商品作物に依存した生業活動を展開しながらも、経済的かつ環境的に安定した基盤を確保する人たちの生存戦略について検討した。東北部では、降水条件の不安定な地域における在来の技術と制度について検討した。いずれも当該地域の調査経験の豊富な地域研究者の案内のもと、他地域あるいは異分野の研究者がともに同一の現場でさまざまな側面から地球圏・生命圏・人間圏の関係性について議論した。これらの具体的な成果はワーキングペーパーや国際会議での口頭発表により公表された。 ケニア北部の海外連携フィールドワーク 日程:2008年10月7日~10月19日。 主要な訪問地:Nairobi, Nanyuki, Isioro, Marusabit, Korr, Tuum, Lake Baringo, Nakuru 参加者:甲山治、河野泰之、孫暁剛、藤田素子、柳澤雅之 タイ北部・東北部の海外連携フィールドワーク 日程:2009年1月20日~1月29日 主要な訪問地:チェンマイ、スコタイ、ナコンラチャーシーマ(パクトンチャイ)、スリン、バンコク 参加者:佐々木綾子、畑俊充、星川圭介、柳澤雅之、山田明徳、渡辺一生 国際シンポジウム 2009年3月9日~11日に開催されたG-COE国際シンポジウムにおけるイニシアティブ2班のセッションタイトルは、“Learning from the Dynamics of Geosphere and Biosphere”であり、地球圏・生命圏・人間圏の関係性に焦点をあてた4つの研究発表から構成された。柳澤は、3つの圏の関係性についてレビューし、今後の新しい関係性を試論として提出した。甲山は、中央アジア乾燥地帯を事例に、人間圏の資源利用の変化が、地球圏・生命圏におよぼす影響について論じた。藤田は、都市域の拡大が鳥の生態および物質循環におよぼす影響を示し、人間圏の中の生命圏の創出の可能性について論じた。孫は、ケニア北部の乾燥地帯を事例に、地球圏・生命圏の不安定性に対して人間側は技術や制度を含む総体で対応していることを論じた。イニシアティブ2班メンバーによるこれらの発表に対し、海外からの招聘研究者によるコメントをベースに総合討論をおこない、トピックの選択が時宜にかない、文理融合が効果的な研究会であるという評価を受けた。

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