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G-COEプログラムにおける研究課題:生方史数

  現代社会は「リスク社会」だといわれる。これは、現代の産業社会が富のみでなく、産業化から生まれるリスクをも生産、分配するという意味で用いられている。
  いうまでもなく、環境問題はこれらのリスクのうち重要な部分を占めている。環境保護や環境科学は欧米で生まれたため、そこには上級財としての環境、資源の私有化と国有化、あるいは環境クズネッツ曲線といった欧米的、発展段階論的な思想が見え隠れする。そして、アジアなどの異なる文明圏においても、主に国家による制度を通じてこれらが画一的に導入されたため、結果として国家と地域社会との深刻な対立を発生させることになった。
  従来この地域においては、人々はコミュニティやコモンズのような「共的」な領域や個々の生業のあり方を通じて、災害や風土病など様々なリスクを分散させるような生存戦略を採用してきた。それはまさに「生存基盤確保型」の社会と呼ぶに相応しかった。
  これらの社会でその後生じた矛盾・対立は、それ自体は多くが悲劇的なものであった。しかし見方を変えれば、これを「生存基盤持続型」の社会発展を促す機会であると捉えることもできる。近年欧米の環境社会学者たちの間で「エコロジー近代化」という概念が提唱されている。彼らは、近代化やグローバル化による環境破壊を必ずしも不可避なものとしては捉えない。むしろ、そのような現代の社会条件が、企業、消費者及び政府の行動を変え、環境ガバナンスの高い社会を築いていくことを可能にするという立場に立っている。
  この概念にも、現時点で欧米的文脈が多分に含まれていることは否めない。しかし逆に言えば、欧米とは異なる歴史的背景を持つアジア地域において、従来の「生存基盤確保型」社会を基礎とするような、異なるタイプの「エコロジー近代化」を想定することも可能なのではないだろうか。
  そのような疑問を念頭に置きながら、私は、これまで行ってきた研究の延長上にある以下二つの研究(資源の生産と保全に対応する)を事例として、アジア地域におけるグローバル、ナショナル、ローカルの各レベルにおけるアクターの行動原理や関係性が、環境ガバナンスに関連する制度の創出及び成果にどのような影響を与えるのか、その制度が現代のグローバルな社会とどのように共存可能なのか、また一連のプロセスにおいて、没地域的な普遍性と地域の特殊性がどう作用しているのかを、学際的に研究していきたいと考えている。

  • 造林と関連産業における「エコロジー近代化」へのプロセス
    企業による大規模プランテーション造林は、様々な社会・環境の問題を生み出してきたが、タイのパルプ産業では90年代以降、より悪影響が少ない農家林業を基盤とした原料調達制度を採用するようになった。私はこれまで、如何にしてこの転換が可能になったのかを、造林や産業に関連する技術的・地理的特質と、国家、企業、住民といったアクターの動向から政治経済学的に検証してきた。今後の研究では、この視点をインドネシアにも援用し、スマトラのパルプ産業において、このような制度の本格的な導入がなぜ妨げられているのか、反対運動が住民の意向を反映した制度変化へと繋がらないのはなぜかを分析することによって両者の比較を行い、「エコロジー近代化」の経路分岐を立体的な形で提示したい。また、ラオスや中国南部におけるゴム造林や退耕環林の動向に関しても、同様の視点から分析していきたい。
  • コミュニティベースの資源管理と環境ガバナンス
    近年途上国において、天然資源の利用権を地域住民に委譲することで、資源の保全と再生を図るコミュニティベースの資源管理(CBNRM)の試みが広く行われるようになった。この動きは、行政の地方分権化の流れもあいまって、一層確かなものになっている。私はこれまでタイの1地域でCBNRMのローカルな管理制度の生成プロセスを研究してきた。しかし、全体の資源保全政策の中でのCBNRMの相対的な位置づけ、及び実際の環境ガバナンスに照らした実効性は、国や地域によって大きく異なるため、よりマクロな視点が必要になっている。そこで、資源の賦存量や国内経済への位置づけが異なるタイ、ラオス、フィリピン、インドネシアの森林保全政策を事例として、各アクターがCBNRMの政策策定プロセスにどのように関与し、ローカルな実態・制度にどのように反映させてきたのかを多角的に分析することで、それぞれが辿る「エコロジー近代化」の経路のパターンを描き出してみたい。

これらの研究によって、「エコロジー近代化」の相対化を試みると同時に、アジアの環境と社会を論じる際に主流である「国家と地域社会、産業と生活、あるいは生産と保全の単純な二元論」を超える枠組みを構築していきたい。

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