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NFSメンバー紹介:孫 暁剛 (日本学術振興会特別研究員(PD) 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 アフリカ地域研究専攻)

研究概要

研究テーマ: 「乾燥地域における生業牧畜の持続性とその動態に関する社会生態学的研究」
私は1999年以来、北ケニアの半砂漠地帯に住む遊牧民レンディーレ社会を対象に社会生態学的な研究をおこなってきた。
レンディーレは変動が激しい自然環境と開発援助や市場経済の浸透による社会環境の変化に対処するために、高い移動性をもつ放牧キャンプをつくって遊牧を維持するとともに、外的な経済機会を利用できるように町の周辺に集落を定着させた。人びとは乾燥につよいラクダを高く評価し温存する一方、市場価値の高いウシを増やして現金の需要増大に対処し、また開発機関から学んだ井戸掘り技術をもちいて自ら井戸をつくって生活環境を改善し、半砂漠草原におけるウシの飼養も可能にした。こうした調査結果によって、従来の技術進化論的な見方や「遊牧民の保守性」を強調した見方とは異なる、遊牧民の環境変動に対する高い柔軟性と適応戦略が明らかになった。

現在、以下の二つの課題を中心に研究をすすめている。
まず、乾燥地域において遊牧を維持するためには、旱魃などの予測不可能な自然災害をいかに回避し、被害を最小化するかが重要である。これを明らかにするためには、遊牧民がもつ自然環境に対する知識や自然資源の利用方法を継続的に調査するとともに、過去の災害時における対策などの聞き取りをおこなう。
次に、家畜や畜産物の売却、出稼ぎや賃労働といった生業の多様化の試みは、レンディーレだけではなく乾燥地域に住む多くの遊牧民社会が近年おこなっている活動である。これらの新しい経済活動は遊牧社会にどのような影響を与えているのか、また地域経済システムの変動にどう影響されるのかを、ミクロとマクロの視点から調査する。

本研究は、今日の東アフリカ乾燥地域の遊牧民社会の動態を理解し、遊牧という生業経済の将来性と、乾燥地域の環境保全および開発援助の可能性に提言できることを目指している。

平成14年度COEフィールドワーク報告へ


主な業績:

  1. 孫暁剛 2005年12月 「ミン,ラクダに乗った家」『世界住居誌』pp. 260-261 昭和堂
  2. SUN Xiaogang 2005 Dynamics of Continuity and Changes of Pastoral Subsistence among the Rendille in Northern Kenya: With Special Reference to Livestock Management and Response to Socio-Economic Changes. (Supplementary Issue of African Study Monographs, No.31), pp.1-94. PDF file of body text (3,217kb)
  3. 平野聡・孫暁剛・佐藤俊 2004年12月 「シャトル・レーダー・トポグラフィー・ミッション(SRTM)アフリカデータ:北ケニア半乾燥地域の諸研究への応用」『アフリカ研究』65: 37-44 日本アフリカ学会
  4. 孫暁剛 2004年12月  「Continuity and Dynamics of Pastoral Subsistence among the Rendille in Northern Kenya: With Special Reference to Livestock Management and Response to Socio-Economic Changes」京都大学大学院博士課程アジア・アフリカ地域研究研究科学位論文
  5. 孫暁剛 2004年4月 「「搾乳される」ラクダと「食べられる」ウシ―遊牧民レンディーレの生業多角化への試み」『遊動民―アフリカの原野に生きる』pp. 630-649 昭和堂
  6. 孫暁剛 2003年8月 「衛生画像から見る遊牧民レンディーレの居住形態と遊牧パターン」 “Proceedings of the 2003 Annual Conference of the Mie University GIS Society”
  7. 孫暁剛 2002年12月「北ケニアのレンディーレ社会における遊牧の持続と新たな社会変化への対応」『アフリカ研究』61: 39-60 日本アフリカ学会
  8. 孫暁剛 2002年9月 「ケニア北部・遊牧民レンディーレの井戸掘りブーム」『アフリカレポート』No.35: 9-14 アジア経済研究所
  9. 孫暁剛 2001年11月「ラクダ遊牧民レンディーレの生計維持と社会変容」『生態人類学会ニュースレター』No.7:8―9
  10. 孫暁剛 2001年2月 『北ケニアのレンディーレ社会における遊牧生態と生計維持機構』筑波大学大学院修士課程環境科学研究科学位論文
  11. 孫暁剛 2000年5月 「レンディーレ社会における青年とラクダキャンプ」 『季刊リトルワールド』74: 13-17 野外民族博物館リトルワールド
学会口頭発表
  1. SUN Xiaogang “Pastoralists’ Challenge to Rural Development: a Case Study of the Rendille in Northern Kenya”, 21st Century COE Program International Workshop in Tanzania. (Dar es Salaam, 12-13Dec. 2005)
  2. 平野聡・孫暁剛・佐藤俊 2005年5月 「部族語地名データベース構築のための新しい試み」 日本アフリカ学会第42回学術大会(於東京外国語大学)
  3. 孫暁剛 2005年3月 「遊牧民の定住化にともなう資源利用の変化:北ケニアのレンディーレ社会の事例から」 資源と人間ワークショップ(於熱海)
  4. 孫暁剛 2003年10月 「乳依存と生業維持機構――生態人類学的論考」 民族自然誌研究会第33回定例会(於京都大学)
  5. 孫暁剛 2003年8月 「衛生画像から見る遊牧民レンディーレの居住形態と遊牧パターン」 三重大学GIS研究会第3回学術大会(於三重大学)
  6. 孫暁剛 2003年5月 「「ラクダ遊牧民」レンディーレ社会におけるウシ飼養の展開」 日本アフリカ学会第40回学術大会(於島根大学)
  7. 孫暁剛 2002年5月 「水を求める遊牧から井戸掘りブームへ――遊牧民レンディーレの自発的な井戸掘りと利用」 日本アフリカ学会第39回学術大会(於東北大学)
  8. 孫暁剛 2001年3月 「ラクダ遊牧民レンディーレの生計維持と社会変容」 第6回生態人類学会研究大会(於弘前大学)

略歴
  • 1994-1998: (学部)筑波大学第三学群国際関係学類
  • 1998-2001: (修士課程)筑波大学大学院修士課程環境科学研究科
  • 2001-2004:    (博士課程後期)京都大学大学院博士課程アジア・アフリカ地域研究研究科
  • 2005:     (COE研究員)京都大学大学院博士課程アジア・アフリカ地域研究研究科
  • 2006より:      (学振特別研究員)京都大学大学院博士課程アジア・アフリカ地域研究研究科

ケニアの遊牧民レンディーレ、中央アフリカの狩猟採集民アカ、サバンナの動物誌、アメリカの自然公園、京都の祭りなどの写真ギャラリーを設置している孫暁剛の個人のWebsiteへようこそ: Welcome to Sun's African Photo Gallery


  • NFSメンバー紹介:孫 暁剛 (日本学術振興会特別研究員(PD) 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 アフリカ地域研究専攻)
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