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G-COEプログラムにおける研究課題:佐藤孝宏

  地域古来の資源利用システムは、歴史的淘汰の過程で固有の環境・社会・文化を包摂する持続的システムとして確立されてきた。現在、脆弱な生存基盤を有する地域が直面している環境問題の多くは、過去数世紀の間に外部から導入された新たな価値観・制度・技術と、地域固有の要素が融合できていないことに起因する。このような問題を持つ地域において、グローバルにもローカルにも持続可能な発展径路を見出すには、地域固有の環境が持つポテンシャルをまず明らかにし、その結果を踏まえて資源利用に関する問題点を様々な観点から分析すべきであると考える。
  インド亜大陸の南東端に位置するタミルナードゥ州は、州土の多くが年間降水量700~1000mm程度の半乾燥地域である。同地域では、局地集中的な降雨を灌漑水として安定利用するため、ため池という在来技術が古くから発展してきた。表面流出水を利用するため池の利用には頻繁な維持管理作業が必要である。この在来技術を確立させた要因のひとつとして、村落社会構造に立脚した”kudimaramathu”という管理制度の存在が挙げられる。しかしながら、19世紀からのイギリス植民地統治で採用された土地制度は生業構造に資本主義を導入し、近年の高収量品種導入や商品作物栽培の拡大は水需要の増大・地下水利用の拡大につながった。これらの外発的変化は同地域の寡少な水資源と調和しておらず、水需給の逼迫した状況を作り出している。今後同地域の水資源利用に影響を与えうる変化としては、地球温暖化に伴う降水量の変化、エネルギー作物の作付拡大などが考えられる。このような地域を対象として生存基盤持続型の発展経路を構築するにはどのようなアプローチが必要なのであろうか。
  人口の50%以上が何らかの形で農業に従事している同地域では、持続的発展の鍵は水資源にあるといえる。しかしながら、水循環・水管理の保全の基礎となる流域全体の水循環構造は明らかになっていないため、計画的な水利が行われているとはいいがたい。同地域の生存基盤持続型の発展経路を見出すには、まず、水循環構造や水資源利用に関するデータを収集・分析し、地域の水環境が持つ潜在的な農業生産力を明らかにするべきであろう。観測データや統計データをもとに作成した主題図を要素とする「生存基盤データベース」を構築し、自然科学的視点から同地域の生存基盤である水資源の特性を明らかにする。
  その上で、必要な技術・制度を提言するため、コンピュータ上に形成される人工社会を用いたシミュレーションを行う。フィールドワークによる聞き取りから水資源の持続性に関与する主体を明らかにすると同時に、主体間の関係を半定量的に明らかにする。同地域の水利の構図をエージェントモデルとして表現するとともに、全球気候モデルなどから予測された同地域の気象変動・人口動態予測など、同地域の水利に影響を与える要因を、エージェントが経験する環境変化シナリオとして用意する。人工社会が環境変化シナリオによって変化する過程を分析し、システムが破綻しないために必要な介入はどのようなものであるかを検討する。

上記のように、生存基盤データベースの構築とその分析、人工社会によるシミュレーションといった地域情報学的アプローチにより、持続型生存基盤パラダイムの創出に全力で挑戦する所存である。


写真1:上空から見たため池


写真2:ため池受益地での井戸水利用

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