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G-COEプログラムにおける研究課題:藤田素子

私は、鳥類などの動物が森林生態系の物質循環にどのような役割を持っているのかということに興味をもち、研究している。これまでは特に都市域分断林という人為的な影響の強い環境で、都市化によって増加したカラス類などの鳥類が、排泄物由来のNPを住宅地から森林へと運搬していることを明らかにした。このような人為的な環境で、生態学的にどのようなことが起こっているかを偏見なく正確に知ることは、今後の社会のあり方を考えていく上で必要不可欠な視点だと考えている。これまでは国内の森林を対象に、鳥類群集の調査や化学分析、安定同位体分析などを行ってきた。しかし、熱帯地域こそ同様の手法で人為的な環境変化の影響を明らかにすることが求められる場所である。なぜなら現在もっとも活発に森林伐採などの環境変化がおこっている熱帯地域は、生物多様性の減少だけでなく地球温暖化を促進しているともいわれ、人類の生存基盤を支える上では最重要地域だといえるからである。今後は生物多様性が保たれることの意義を、物質循環の側面から考えてみたい。特に、熱帯地域は人為的な環境の改変により生物多様性の減少が顕著であるが、そのことがどう物質循環に影響するかについて研究していきたい。

熱帯地域における生態系サービスと生物多様性

生態系のもつ複合的な機能を説明するために、近年生態系サービス(Millennium Ecosystem Assessment, 2005) という概念が知られるようになってきた。生態系サービスとは、食料・水・材・繊維などの供給源であったり、気候・洪水・疫病・廃棄物・水質などの調節機能であったり、レクリエーション・精神的な利益などの文化的機能であったり、土壌生成・光合成・物質循環などのサポート機能が、健全な生態系から供給されるという概念である。人類が持続的に生存していくためには、この生態系サービスの恩恵を受ける必要がある。また,そのサービスは生物多様性と密接に結びついている。例えば熱帯雨林の大きな特徴は、きわめて高い生物多様性にあるが、同時に生態系サービスも非常に大きいと考えられている。しかし、その熱帯雨林はここ数十年、様々な目的で失われてきた。木材としての利用を目的とした伐採のみならず、ゴム、ヤシ油を採るためのアブラヤシ、紙パルプの原料になるアカシアの植林への転換や、焼畑、鉱山開発などである。そのため、様々な動植物が絶滅に瀕しているだけでなく、生態系サービスの低下が懸念される。2007年5月から研究をはじめたインドネシア・スマトラ島のアカシアマンギウム植林地も例外ではなく、非常に広大な面積を占めているため、その環境が生態系に与える影響を明らかにしたい。

鳥類多様性を保つランドスケープ構造

熱帯林における生態系サービス低下の最大のインパクトは生息域の減少・改変である。生物の多様性を維持するためには、ランドスケープ構造や管理方法を検討する必要がある。そこで本研究では鳥類を対象に、アカシア植林地の中に設けられた保全二次林とアカシア林との多様性の違いを明らかにすることを第1の目的として研究を行っている。特に、種の供給源である保全二次林からの距離やアカシアの林齢に応じた鳥類相の変化に着目して、アカシア林が鳥類相の維持環境として機能するためのランドスケープ構造を明らかにしたいと考えている。

鳥類多様性の違いと物質循環への影響

しかし、鳥類の多様性が維持されることが、生態学的にどのような意味をもつのか、なぜ多様性を保全しなければならないか、といった疑問にはいまだ答えがない。多様性を保全することでどのような生態系サービスが維持されるのかを、次のステップとした。その視点として、物質循環を考えたい。特に,鳥類がランドスケープ間を行き来することで、排泄物による物質のやりとりが存在することがこれまでの研究から明らかになってきた。鳥類排泄物によるアカシア林と周辺ランドスケープ間での物質のやりとりが、全体としての物質循環にどのように貢献するのか知ることを、第2の目的とした。

これらの研究を通して、アカシア植林地における生態系サービスを損なわないプランテーションのありかたを探ることが、最終的な目標である。

写真1:スマトラ島アカシア植林地。伐期は6年。

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