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[東南アジア学会関西地区例会(12月16日)](関連する学会・研究会)

東南アジア学会関西例会との共催で以下のような研究会を開催します。
東南アジア学会の会員・非会員を問わずご参加いただけます。多数のご来場をお待ちしています。
 

日時: 2011年12月16日(金) 13:30~17:30
場所: 京都大学地域研究統合情報センター2階セミナー室
http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/access/

 

報告1: 盛田茂(立教大学アジア地域研究所研究員)

「シンガポールアニメ映画『TATSUMI』(11年)に至るエリック・クー監督の映画制作戦略」

 

報告2: 清水チナツ(せんだいメディアテーク企画・活動支援室)
「小さなメディア/当事者のメディア――「3がつ11にちをわすれないためにセンター」の現場から」

 

●盛田報告要旨
エリック・クー監督の作品は、例えば同国初のカンヌ国際映画祭グランプリに『My Magic』(08年)がノミネートされたように、海外で高評価を受けている一方で、国内興行収入は一貫して低迷状態が続いている。国産映画に対する低認知度の背景には、98年映画委員会創設以降の「映画産業振興政策」にも拘わらず、50~60年代の「マレー語映画黄金時代」終焉後の長期に亘る制作中断に起因する、海外配給ネットワーク未整備、慢性的制作資金不足という要因が深く根ざしている。
本報告は、この困難な状況下で政府と現実主義的抵抗/相互依存関係を維持しながら、同監督が如何なる戦略を取り、最新作『TATSUMI』に至る制作を継続しているかに焦点を絞り、発表者の映画関係者へのインタビューも反映し考察する事を目的とする。

 

●清水報告要旨
本報告では、当事者が自身のメディアを持つことの意味について、報告者が関わってきたインドネシアと日本の二つの現場の経験から考えたい。
インドネシア・西ジャワ州ジャティワンギには瓦工場を活用したアートセンターがある。ここでは、職人たちがラジオを活用して自分たちの日々の悩みや村の抱える課題を発信する活動を行っている。車座による討論会の様子が収録され、そこで話し合われた内容はラジオを通じて隣村にも届けられ、悩みや課題をともに考える契機となっている。ラジオを通じて、マスメディアでは報じられないがその土地では必要な情報が発信され、届けられ、活用されている。
東日本大震災の被災地では、それまでビデオやカメラを使った経験を持たない人々がビデオやカメラを手に取り、身近な事柄について情報を発信する動きが盛んになっている。その背景には、東日本大震災後に自身の目の前に展開している現状と、テレビや新聞で報道されている情報とのあいだに大きな隔たりがあるという人々の実感がある。人々が記録した映像は、テレビ的な映像を見慣れた目には質が低いと感じられるかもしれないが、そうした状況を自覚したうえでなお、それまで映像による情報を受け取るだけの立場にあった人々が映像を使って自ら語り始めている状況がある。
流通範囲が限定的であり、また、必ずしも質が保証されないなかで、当事者が自身のメディアを持ち、発信しようとするのはなぜなのか。報告者が現在取り組んでいる「3がつ11にちをわすれないためにセンター」(http://recorder311.smt.jp/)の現場の経験を踏まえて、有事の際に当事者がメディアを持つことの意味や、災害の中で個人にできる取り組みについて考えたい。

 

 

 

東南アジア学会
関西地区担当 山本博之
yama(at)cias.kyoto-u.ac.jp