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「二次的植生の成り立ちと社会-東南アジアの事例-」 (イニシアティブ2 研究会)

活動の記録>>

タイトル: 二次的植生の成り立ちと社会-東南アジアの事例-

 

Secondary anthropogenic forest and Society: From the case of Southeast Asia

 

日 時:2011年8月9日15:00~

 

場 所:稲盛財団記念会館 小会議室Ⅰ

 

人為介入のもとに成立する二次的植生(あるいは人為植生)には、
時空間に応じた多様なバリエーションがみられる。継続的に利用
されてきた各地の二次的植生が環境保全の文脈から脚光を浴びて
いる現在、この植生のバリエーションが創出される機序を地域社会
の文脈から多角的に解明していくことが、ますます重要な課題とな
っている。
今回の研究会では農学研究科の神崎護氏とアジア・アフリカ地域
研究研究科の佐々木綾子氏をお招きし、東南アジアにおける
二次的植生の形成や成り立ちと人為との相互関係について生態学と
地域研究という異なる視点からご発表いただき、討論する。


15:00-15:10 趣旨説明

15:10-15:50
報告1 神崎護(京都大学農学研究科・准教授)
「東南アジアの森林景観と人為インパクト」
Forested landscape and human impacts in Southern east Asia

16:00-16:40
報告2 佐々木綾子(京都大学アジア・アフリカ地域研究研究科・研究員)
「タイ北部における林内チャ栽培を基盤とした生業体系」
Forested land-use system through tea cultivation in northern Thailand


16:40-17:00

  総合討論


【主催】G-COEイニシアティブ2
http://www.humanosphere.cseas.kyoto-u.ac.jp/

 

【活動の記録】
2011年8月3日にアフリカの人為植生に関する研究会(「地域の植生の成り立ちと動態-アフリカの熱帯雨林地域とサバンナ地域の事例から-」)を実施した。今回はその主旨を引き継ぎ、東南アジアに関する2つの報告から人為植生の成り立ちについて議論した。
最初の報告者の神崎護氏は、東南アジア全域を対象とし、各地にみられる森林景観がどのような人為介入の影響を受けて形成されているのかについて生態学の立場から検討した。その内容は以下の3部から構成されていた。その第1は、東南アジア大陸部全域の森林区分である。この地域の森林は、クラスター分析にもとづくと常緑性フタバガキ林や落葉性フタバガキ林などを含む4つの植生タイプに大きく区分された。各タイプからはさらに多様な植生が抽出され、それらの形成が人間活動といかに関連しているのかについて概説された。第2には、大区分された森林タイプのひとつである落葉フタバガキ林を事例として、人間活動と森林動態との関係が詳細に検討された。たとえば、落葉フタバガキ林の下層は近年の防火処置によって常緑化が進んでいるという。また、家畜の放牧地として利用されてきた落葉性のサバンナ地域では、放牧活動の衰退とともに常緑化が進んでおり、そのことより、サバンナが「人為極相」の状態にあると論じられた。第3は、東南アジア島嶼部において近年、耐火性樹種が拡大している様態が示された。この地域は本来熱帯雨林が成立する環境であるが、火をともなう農業の影響によってツバキ科の低木Shima wallichiiが拡大しているという。以上のように神崎氏は東南アジア各地の植生動態とその人的インパクトを生態学的な見地から明示した。地域の植生動態に関する詳細な生態学的記述と分析は今後ますます重要になると思われる。同時に、その結果を地域社会の文脈と照らし合わせて考察を進めることが大きな課題となる。
地域社会の文脈から森林のもつ意味を検討したのが、2番目の報告者である佐々木綾子氏である。佐々木氏はタイ北部において換金源として重要なチャ栽培を生計基盤とする人びとの社会・生業動態と、チャ栽培に庇陰効果をもたらす存在として欠かせないミアン林とよばれる森林の利用変化について報告した。チャ栽培に関する通時的分析から、チャ栽培は地域外部の経済動向や労働力の流出入と密接に関連して拡大と低迷を経験してきたことが示された。しかし、そうした経済変動のなかにあっても人びとは多様な非木材林産物(NTFPs)を産するミアン林を社会状況に見合う形で継続的に利用し続けることによって、生計を柔軟に維持してこられたという。また、最近年ではミアン林を観光資源として利用する動きも出ているという。ミアン林は時代をとおして景観レベルでは変化がないようにみえるが、実はその内実は社会外部の状況との脈絡のなかで刻々と変化していると結論付けられた。
 

(文責 平井將公)