Custom Search

Language

Contents

アンケート

本サイトをおとずれた理由

本サイトをおとずれた理由は何ですか?

  •  プログラム概要閲覧
  •  研究会情報
  •  プログラムメンバー
  •  フィールドステーション
  •  報告閲覧
  •  プログラム成果閲覧
  •  写真閲覧
  •  公募
  •  その他
このアンケートにはさらにもう 2 件、質問があります。
結果
他のアンケートを見る | 96 voters | 0 コメント

ログイン

ログイン

「地域の植生の成り立ちと動態-アフリカの熱帯雨林地域とサバンナ地域の事例から-」 (イニシアティブ2 研究会)

活動の記録>>

タイトル:「地域の植生の成り立ちと動態-アフリカの熱帯雨林地域とサバンナ地域の事例から-」

日 時:2011年8月3日13:30~15:30

場 所:稲盛財団記念会館 中会議室
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/about/access.html

 

【趣旨とプログラム】

生業や生活にもとづく地域住民の介入をとおして成立する二次的植生(あるいは人為植生)には、
時空間に応じた多様なバリエーションがみられる。継続的に利用されてきた地域社会の二次的植生が
環境保全の文脈から注目を浴びる現在、この植生のバリエーションが生じる背景を多角的に
明きらかにすることが、ますます重大な課題となっている。本研究会ではアフリカの熱帯雨林
(カメルーン南東部)とサバンナ(ガーナ北部)という対照的な生態環境下にある地域社会を
対象として、住民と自然との連続的な相互作用系を分析しながら、地域の植生の成り立ちを
生態史的視点から検討してみたい。

 


13:30-13:40 趣旨説明

13:40-14:20 
報告1 大石高典(京都大学アフリカ地域研究資料センター)
「熱帯雨林植生の多様性に関する生態学的理解と民俗分類の比較―カメルーン東南部の事例―」

14:30-15:10
報告2 友松夕香(東京大学農学研究科)
「シアとパルキアが作る農地林景観の成立要因とその動態」 

15:10-15:30
総合討論

 

【主催】G-COEイニシアティブ2 
/

【共催】京都大学地域研究統合情報センター
「自然と人の相互作用から見た歴史的地域の生成」
http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/project/kyodo2010-30

 

【活動の記録】
世界各地には人的介入のもとに長年にわたって維持されてきた人為植生が広範に分布する。本研究会では、そうした植生の形成や動態と人為介入との関連について検討した。最初の報告者の大石高典氏は、カメルーンの熱帯雨林に暮らす人びとが森林を精細に分類している様態について報告した。大石氏はまず同地域の熱帯雨林が種レベルのみならず群落のレベルにおいても高い多様性を有することを森林生態学的調査から明らかにした。また民族植物学的観点から人びとの植生分類について調べ、人びとの森林に対する認識や分類が生態学的には区分しえないほど精細であることを示した。さらに、人びとの植生分類は地域社会において均一ではなく、民族や男女間で有意差があることを報告した。今後、そうした民俗分類がいかに生じているのかを生活実践との関係から浮き彫りにすることが重要だと思われた。同時に生態学的分類と民俗分類との従属関係を乗り越える点にも課題があるだろう。
 

第2の報告者の友松夕香氏は、人口稠密なガーナ北部のサバンナ地域に暮らすダゴンバの王国社会を対象として、農地に生育するシア(Vitellaria paradoxa)やパルキア(Parkia biglobosa)といった有用樹と人びととの長年にわたるかかわりや、樹木が維持されてきた背景について報告した。シアの果実から採取しうる油脂は換金性を有する。1980年代以降のシアの換金性の高まりは、従来所有権を超えて村の成員に広く認められていた採集権をより排他的なものへとシフトさせることや、個体群密度のより綿密な管理へ結びついていったという。他方、人びとの食生活に多用されるパルキアの果実については、その採集権が王を長とする男性主体の階級制度と密接に関連していることが明らかにされた。本来パルキアを所有するのは上部階級の男性だけだが、彼らは女性に対して果実の採集権を暗黙的に容認することによって、自らの寛容性を主張しているという。つまり、ダゴンバ社会で独特の政治構造にもとづいてパルキアに象徴的価値が付与されているのである。友松氏の報告は、同一社会において有用樹が農地に残される背景が種によって異なることを示す貴重な事例だと思われた。
 

本研究会では熱帯雨林でもサバンナでも人為が植生の成り立ちに絡んでいたが、その絡み方は両地域で大きく異なることが実証的に示された。友松氏も指摘したように今後その差異に対してさらに分析を進めていく必要があろう。
 

(文責 平井將公)