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「人間圏の再構築に向けて―親密圏・レジリエンス・知の接合」 [ イニシアティブ4 合同研究会 ](若手研究者養成・研究部会 研究会)

日 時:2011年3月11日(金)〜13日(日)
場 所:KKRホテルびわこ http://www.kkrbiwako.com/index.htm

 

【趣旨】
大規模な環境変動やエネルギーの枯渇が抜差しならない問題となりつつある現在、私たちはいかなる価値観をもち、いかなる方向を目指すべきかについて再考する必要性が高まっている。本GCOEプログラムでは、資本の蓄積と生産性の向上を核とする既存の「生産」パラダイムを超えて、持続的に人々の「生存」を支える社会を構築することが重要であるとの認識のもと、多分野の研究者が連携しながら議論を進めてきた。「生存を支える『地域/研究』の再編成」(2008年度)、「人間圏を解き明かす」(2009年度)に続いて第3回目を迎える本シンポジウムでは、「親密圏」「レジリエンス」「知の接合」といった問題系に焦点を当てながら、人間圏の再構築に向けて議論を行いたい。

 

主流の開発ディスコースが指し示すような行程、例えば個々人のケイパビリティを高めることで力強い市民社会を構築したり、自然の客体的操作にもとづいて生産の効率化を推し進めるといった道筋が持続的な生存基盤に導くと考えることは、今日ではますます困難になっている。ここで「親密圏」と呼ぶのは、そこで見過ごされてきた、人々が具体的な他者と関係し、かつ他者の困難に応答しうることによって可能になるケアの実践、またそのような実践がつくりだす多様なネットワークであり、「レジリエンス」と呼ぶのは、不確実性を内包する自然のうえに柔軟な生存基盤を築き、それを持続させる人びとの力のことである。これらの目的は、ローカルな知や技術・制度だけでも、科学技術や、市場や国家のような「インパーソナルな」諸制度だけでも達成されえない。この両者をいかに関係づけるかということが「知の接合」という問題系である。

 

本シンポジウムの目的は、以上のような問題について、具体的な事例の検討を通じて分野横断的な議論を行うことで、持続的な生存基盤に向けた人間圏の再構築の方向性を見定めることである。

 

 

【プログラム】


3月11日(金)
15:00-15:20 シンポジウムの趣旨説明

 

セッション1 生存とケアの親密圏
座長: 岩佐光広
コメンテーター: 後藤晴子、伊東未来
15:20-16:00 石本雄大 「ブルキナファソの半乾燥地域における生計維持システムの研究―旱魃や虫害への適応および対処行動に関する統合的分析
16:00-16:40 澤野美智子 「「親密圏」としての「家族」?―韓国の家族研究の展望」
16:40-16:50 休憩
16:50-17:50 コメント・討論1
19:30-22:30 参加者の研究紹介1


3月12日(土)
8:30-9:00 GCOEプログラムの紹介1

 

セッション2 生態資源の利用と社会関係
座長: 丸山淳子
コメンテーター: 松村圭一郎、佐藤吉文
9:00-9:40 山本佳奈 「湿地における「個人の土地」と「みんなの土地」のせめぎあい―タンザニア農村部の耕地と放牧地をめぐる住民の対立」
9:40-10:20 鈴木遥 「森林へのケア―インドネシア東カリマンタン州沿岸村落における木造住居の修理・建て替えを事例に」
10:20-10:30 休憩
10:30-11:30 コメント・討論2

 

セッション3 生存基盤をつくりだす実践共同体
座長: 西真如
コメンテーター: 宍戸竜司、菅沼文乃
13:00-13:40 岡部真由美 「現代タイにおける開発と僧侶をめぐる一考察―寺院および地域コミュニティにおける僧侶の実践とネットワーク形成を中心に」
13:40-14:20 浅野史代 「ブルキナファソ、ビサ社会における女性の生活と「開発」の関係」
14:20-15:20 コメント・討論3
15:20-15:40 休憩

 

セッション4 生命圏、親密圏をむすぶ芸術と宗教
座長: 福井栄二郎
コメンテーター: 別所祐介、清水貴夫
15:40-16:20 渡辺文 「関係性としてのスタイル―オセアニア芸術における個性と集合性の調停メカニズム」
16:20-17:00 徳安祐子 「死者がつなぐ人と自然―ラオス山地民カタンの村の事例から」
17:00-18:00 コメント・討論4
19:30-22:30 参加者の研究紹介2

 


3月13日(日)
8:30-9:00 GCOEプログラムの紹介2

 

セッション5 アクターをむすぶ技術とコミュニケーション
座長: 木村周平
コメンテーター: 内藤直樹
9:00-9:40 李豪軒 「電子業界における日本企業と台湾企業のエンジニアの比較―共同体意識と「株」からの考察」
9:40-10:20 平井將公「生物資源、地域住民、行政の交錯が生み出す新たな技術―セネガルのセレール社会における樹木資源の稀少化とその対処」
10:20-10:30 休憩
10:30-11:30 コメント・討論5
13:00-15:00 総合討論

 

【報告要旨】
 

セッション1 生存とケアの親密圏


「ブルキナファソの半乾燥地域における生計維持システムの研究―旱魃や虫害への適応および対処行動に関する統合的分析」
石本雄大(総合地球環境学研究所)
 

サヘル地域は,年平均降水量が少ないばかりでなく,降水量の年較差が大きく,降雨パターンの変動も大きい.更には突発的自然災害も起こる.本研究は,サヘル地域に位置するブルキナファソの半乾燥地に暮らすケル・タマシェクを対象として,彼らの生計維持システムに関して,特に旱魃や虫害に対する予防としての日常的な適応行動,これらの災害の発生状況下および発生後の食料危機時の対処行動について統合的に解明することを目的とする.具体的には,ケル・タマシェクの人々が,この不安定な生態環境に農耕・動物飼養・採集・出稼ぎ労働・賃労働といった個々の生産・食料獲得活動によっていかに対応し,それで対応しきれぬ場合には消費活動をも含めた生計維持システム全体でいかに対応するかについて考察を行う.


「「親密圏」としての「家族」?―韓国の家族研究の展望」
澤野美智子(神戸大学)


「親密圏」という言葉が家族関係の考察に用いられるとき、「公的な介入が及ばない守られた場所」という閉じられた意味合いをもつこともあれば、「相互行為を通じて対等な人間同士が積極的に交流する場所」という開かれた意味合いをもつこともある。
「親密圏」という視点から韓国の家族研究を眺めると、従来の研究では前者の意味合いで「親密圏」としての「家族」が説明されてきた。具体的には、構造分析や形態分析などが中心的な位置を占め、父系血縁関係とそれを支える儒教イデオロギーが注目されてきた。そのため男性の家族関係については、父系血縁という厳格に閉じられた(と想定される)「親密圏」の中でさまざまな分析が行われてきた。その一方で女性は分析の周縁部に置かれ、女性が家族関係の中で占める位置や役割についてはブラックボックスの中に放置されてきた。
しかし父系血縁や儒教イデオロギーを枠組みとして韓国の家族を説明する手法は限界を迎えている。本発表では、フィールドワークでの事例を通してその手法の限界を指摘する。そして、後者の意味合いで「親密圏」としての「家族」を説明する枠組み、具体的には女性をとりまくケアの相互行為に注目する新たなアプローチについて展望する。
 


セッション2 生態資源の利用と社会関係
「湿地における「個人の土地」と「みんなの土地」のせめぎあい―タンザニア農村部の耕地と放牧地をめぐる住民の対立」
山本佳奈(京都大学)

 


タンザニア南東部にひろがるボジ高原には雨季に湿原となる低湿地が分布している。この地域では、牛は耕作などを担う労働力であり、古くから湿地をその放牧地として利用してきた。ところが近年、生活における現金要求の高まりや人口増加を背景として、湿地の耕地化が急速にすすみ、放牧地が大幅に縮小した。季節湿地の耕地としての需要が高まるなか、各村では放牧地をどのように確保するかが大きな課題となっている。
季節湿地に囲まれたシウィンガ村でも耕地不足は深刻な問題であった。2003年に村評議会が井戸建設の資金を集めるために季節湿地の土地を村民に売り出した。そのことで放牧地の不足を招き、牛の所有者たちは農地化された土地をふたたび放牧地に戻そうと動きだした。そして、2006年には、村評議会が分譲し「個人の土地」となった部分をふたたび放牧地に戻すことに成功し、今もその状態が維持されている。本発表では、どのような過程を経て再び共同放牧地(=「みんなの土地」)が確保されたのかについて述べる。

 


「森林へのケア―インドネシア東カリマンタン州沿岸村落における木造住居の修理・建て替えを事例に」
鈴木遙(京都大学)

 


森林の多くは、森林の成長・育成・管理、森林資源の採集・伐採、森林資源の加工・流通・利用、利用を規定する諸産業の在り方や人々の生活という一連の循環のもとに維持されている。本発表ではインドネシア東カリマンタン州の沿岸村落を対象に、人々による木造住居の建築・修理・建て替え状況から、木材をめぐる森林保全の仕組みの一端を考察する。
調査村落の木造住居は、主に隣人や親族と世帯主の協力で建てられていた。人々は住居を日々メンテンナンスし、数十年ごとに部材交換や住居の建て替えを行っていた。建て替え時、木材は新居へと使い回されていた。加えて、木材の譲渡には世帯間の社会関係が反映されていた。
木造住居を修理・建て替えながら住まう方法により、人々は木材に対する認識と建築方法を共有・継承し、彼らの紐帯を維持していると考えられる。この方法は、人々が生存するために形成するケア関係に基づいた森林へのケアといえるのではないだろうか。
 


セッション3 生存基盤をつくりだす実践共同体
「現代タイにおける開発と僧侶をめぐる一考察―寺院および地域コミュニティにおける僧侶の実践とネットワーク形成を中心に」
岡部真由美(国立民族学博物館)

 


東南アジア大陸部における上座部仏教社会のタイでは、1960年代以降、政府による国家開発やNGOによるオルタナティブ開発が進展するにつれて、農民の貧困解消、エイズ・ケアや環境保護といった現実的課題の解決に取り組む僧侶たちの活動が顕著になっている。従来の議論が、個々の僧侶の紹介や、活動の政治社会的背景の分析に終始してきたのに対して、本発表は、北タイ・チェンマイ近郊における一寺院の事例から、僧侶たちが地域コミュニティにおける現実的課題の解決に取り組むことを通して、いかに生を築いているかに焦点をあてる。それにより、僧侶たちが、現代タイにおける開発をめぐる多様な言説に自らを呼応させながら、在家者との間の互恵的関係の回復や、サンガ内での評価向上を試みる姿を示す。一方でまた、僧侶たちが関心の共有を基盤に生み出した、国家-サンガ(僧団)-地域コミュニティの枠組みを越えたネットワークの意義についても検討したい。

 


「ブルキナファソ、ビサ社会における女性の生活と「開発」の関係」
浅野史代(名古屋大学)

 


人類学者がフィールドとする地には、特にそれが途上国の村落部であればあるほど、様々な組織による「開発」が入り込んでいる。発表者が調査をおこなってきたブルキナファソ、ビサ社会の女性たちの日常にも、「開発」は大きな影響を与えている。調査村の女性たちの人生における選択の幅、あるいは生活するうえでの選択の幅は、世界の他地域、とりわけ先進国で生活する女性たちのそれと比較した場合、決して広いとはいえない。本発表では、その限られた選択肢の中で、いかに女性が地域の規範に則しながらも、より安定的な生活を得るために個々にネットワークを構築している点、平穏な生活を送るために女性たちが日々配慮していることに焦点を当てる。また、ビサ社会の女性たちが開発援助や自助組織による活動をどのように受容/拒否しているのか、それらの活動と調査村の女性たちの生活や村の慣習、ジェンダー規範との関係を明らかにする。
 

 


セッション4 生命圏、親密圏をむすぶ芸術と宗教

「関係性としてのスタイル―オセアニア芸術における個性と集合性の調停メカニズム」
渡辺文(京都大学)

 

現在フィジーを拠点としたオセアニア芸術文化センターで展開する現代芸術活動とは、「オセアニア」に生きる人々の生に基づいたイメージを対象とし、「オセアニア」の人々によって、集合的な「オセアニア芸術」を創造しようという試みである。本発表の目的はまず、センターでめざされる「集合芸術」という理念と、その挑戦性とを理解することにある。そのうえで、センターの提唱する集合性と、個々のアーティストが経験する「個別化への欲求」とが衝突する局面を、絵画スタイルが差異化されていく場から示す。そして、スタイルにおける差異の形成に関して討論を加えることで、スタイルを、個性へも集合性へも還元されないような関係性として考察し、「オセアニア」との連続性を保ちながらもあらたな変化を創みだし続ける芸術の在り方を描き出す。

 


「死者がつなぐ人と自然―ラオス山地民カタンの村の事例から」
徳安祐子(九州歯科大学)

 

本発表は、ラオス人民民主共和国、モンクメール系の少数民族村落における調査をもとにしている。調査対象村は、ラオス中南部の国立公園に位置し、村の人びとは周囲を取り巻く自然と深く関わりながら生活している。日々の食糧をはじめ、家や日用品の材料など多くのものを森から得ている。しかしこの村でも7年程前に町との間に道路がつくられ、それ以来、仲買人が毎日姿を現すなど、貨幣経済の重要性は増大している。それでも、商品作物を植えることもなく、現在も森と深い関係をもって生活している。そしてその暮らしぶりは、ときにはエコツーリズムのなかで、自然との持続的な関係を持って暮らす人びととして提示される。このような人びとと森林との関係には、死者や精霊といった、目に見えないものが介在し、重要な役割を担っている。本発表では、村の人びとと森がどのように関わり、どのようにつながっているのかを明らかにし、人間と自然との関係のありかたについて考える。
 

 


セッション5 アクターをむすぶ技術とコミュニケーション

「電子業界における日本企業と台湾企業のエンジニアの比較―共同体意識と「株」からの考察」
李豪軒(大阪大学)

 

本研究はエンジニアが持つ共同体意識とものづくり意識から、電子業界における日本と台湾のエンジニアの比較を行い、より鮮明に呈するためには、組織(企業)、エンジニア、技術に関する知、モノ、市場の相互関係を以下のカテゴリから論じる。
1)技術に関わる知:
エンジニアの仕事が暗黙知に頼っていることを台湾企業と日本企業はともに否定できないため、組織上に考慮しなければならない。但し、両者はエンジニアの知に対する戦略や認識が違っている。一方、エンジニア自身は特定な組織風土や文化に置かれ、特定な技術伝承の形態を構成していく。その中のある分野においては、同じような働きをしていることも否定できない。
2) 組織=企業の所有概念
エンジニアのアイデンティティを論じる際に、「会社は誰のものであるか」という問いに直面する。法的な側面から株式会社の所有権は株主のものである。しかし、日本と台湾の企業は人材を運命共同体に入れ込むため、グローバルな「株式制度」を運用する際、各々の社会構造によって、ローカルなトリックを使っている。

 


「生物資源、地域住民、行政の交錯が生み出す新たな技術―セネガルのセレール社会における樹木資源の稀少化とその対処」
平井將公(京都大学)

 


本発表では、セネガルのセレール社会にみられるマメ科の高木Faidherbia albidaの切枝技術が、近年多様化している背景について考察する。アフリカのサバンナ地域に広く分布するF. albidaは、逆季節性という特性にもとづいて、作物に肥培作用をもたらし、家畜に長い乾季の貴重な飼料を供給しうる飼肥料木である。農耕と牧畜を主な生業としてきたセレールは、この木が優占する植生を耕地に形成し、その枝葉を肥料や飼料、燃料として長年にわたって利用してきた。ところが、急激な人口増加や後継樹の欠損に起因して、近年、F. albidaの資源量は減少する傾向にある。さらに、従来から本種の利用を規制してきた森林官は、昨今、その取り締まり体制を強化している。本発表では、このようなF. albidaの生態的・政治的稀少化を克服するために、住民が本種の切枝技術を多様化させている様態を記述するとともに、技術の多様化がF. albida、住民、森林官というアクター間の交錯を背景としている点について考察する。