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「地域に根差した持続型発展」[第23回研究会] (G-COEパラダイム研究会)

活動の記録>>

日  時:2009年11月9日(月) 16:30~18:30 (その後懇親会あり)
場  所:京都大学 東南アジア研究所 稲盛記念館3F大会議室
http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/about/access_ja.html

講師:
山本博之(京大地域研)
「社会的流動性から見た生存基盤――島嶼部東南アジアの災害対応から考える」

西真如(京大東南ア研)
「感染症と共存する社会のための技術・制度・関係性」

コメンテーター:峯陽一(大阪大GLOCOL)

20世紀社会においては、個人あるいは集団の安全保障の担い手は国家であるとされてきた。しかし「持続型発展」という問題を、人々の生存を脅かすリスクとの関わりから考えるとき、国家を中心とした枠組みに加え、グローバルなレベルの制度・技術や運動、および地域のレベルでの社会関係という3つをいかに接合するか、ということが重要なポイントとなる。今回は、「地域」に焦点を当てて、地域社会がHIVと災害復興という、突発的でありつつ慢性化した問題にいかに対応したのかということから、グローバルでかつ「地域」に根差した持続型発展とは何かを考えたい。

 それぞれの地域社会は疫病や自然災害など様々な問題を経験するなかで、災害に対処し、あるいは脅威と共存するための知識を蓄積してきた。また地域社会は、人びとが大きな被害をこうむってしまった場合に、再度生活のあり方を構想しなおしていく基盤を提供してもいる。そうした地域社会のレジリエンスを支えるものは何か。またそれを維持していくにはなにが必要なのか。こうした問題について議論することが今回のパラダイム研究会の目的である。

[講演要旨]

山本博之(京大地域研)
「社会的流動性から見た生存基盤――島嶼部東南アジアの災害対応から考える」

2004年12月のスマトラ沖地震津波で大規模な支援事業が展開されたアチェをはじめ、インドネシア各地の災害被災地で、緊急・復興支援に携わった実務家たちが感じた戸惑いをしばしば表明している。この戸惑いは、社会を固定的に捉えて被災前の状態に戻そうとする支援者と、社会的流動性が高く、被災を社会変革の契機と捉えようとする被災者との間の認識の違いに由来すると見ることができる。島嶼部東南アジアの災害対応の事例をもとに、社会的流動性が高い社会における生存基盤について考えてみたい。

西真如(京大東南ア研)
「感染症と共存する社会のための技術・制度・関係性」

感染症は人類にとって重大な脅威のひとつであり、私たちが持続的な社会を構築する上で、感染症を引き起こすウイルスとの共存は避けがたい課題である。本報告では、HIVとともに生きる社会を構築するために必要な要素について、(1)個々の人間がHIVとともに生きることを可能にする医療技術の開発、(2)人びとに治療アクセスを保障するためのグローバルおよびナショナルな制度の形成、および(3)HIVの影響を受けた人びとが、互いの健康に配慮しつつ持続的な関係を結んでゆくためのローカルな経験の蓄積の三点に整理して考察を試みたい。

 

【活動の記録】

最初の発表者である山本博之氏は、インドネシアを事例に、流動性が高い社会における災害の現れ方と復興支援のあり方について発表した。
 

まず山本はインドネシアで地震が震災になったのは、以前は木や竹でできていた家屋がレンガ積みに変わった1980年代以降のことだと指摘し、災害において問題なのはハザードそのものというよりも、社会がうまくバランスを保てなくなることにあるのだと主張した。次に、インドネシア社会を社会的流動性の高い、つまり人の出入りが激しく、知識や経験が場に蓄積しにくい社会であると位置付けた。そして人道支援団体による復興支援がうまくいかないのは、こうした社会的流動性の高さを十分理解していないからだとした。そしてその事例として、以下の2つを取り上げた。まず、2004年末のインド洋地震津波の被災地であるアチェにおいて、空き家になっている復興住宅が多数存在すること。山本氏はローカルな連絡事務所としてのposkoなどを取り上げながら、人々の被災後の生活再建のあり方が「元通りに戻る」ことを目指さず、今までとは異なる方向へ動きつつあることを指摘し、「元通り」を前提とした復興支援の問題点を指摘した。次に、2007年スマトラ沖地震の被災地ベンクルで、支援物資のコメを撒く人、支援者の車を止める人を取り上げ、そこでは問題は失われたものを取り戻すことではなく、むしろ被災前から抱えているであり、彼らの一見不可解に見える行動はそうした問題を、災害をきっかけにアクセス可能になった外部にアピールしているのだと主張した。  以上の議論をもとに、山本氏は流動性をいかに捉えるべきか、という問題を投げかけた。
 

 二番目の発表者である西真如氏は、エチオピアを事例にHIV/AIDSという感染症と共存する社会を築くための技術・制度・関係性(relatedness)のあり方について発表した。まず西氏はHIV/AIDSに対するABCアプローチ(Abstain, Be faithful, use Condom)、および世界基金による治療薬の提供を取り上げ、それぞれの問題点を指摘し、地域社会の関与が必要であると主張した。その上で、エチオピアのグラゲ県の現地調査に基づき、ウイルスと共存する社会のあり方に向けて、感染者/非感染者の差異を受容する関係性を創り出すこと、世帯ごとの個別の状況に対応するための保険医療制度におけるヘルスワーカーの存在を生かすこと、の2点を指摘した。そして、科学技術、社会制度、関係性という三つの局面を結びつけることが必要であると指摘した。
 

 これに対し、峯陽一氏は、レジリエンスという概念を示し、今日の二つの発表と人間の安全保障の考え方との関係づけを行った。そのうえで、山本氏の発表が示した流動的な社会の災害を飲み込んでしまう「強さ」というメッセージをふまえ、今回取り上げられた社会が被災前どのようにバランスが崩れていたのか、被災後どういう方向に変わろうとしているのか、について質問した。また西氏に対しては、ABCアプローチがうまくいったウガンダの例を示しつつ、人々の関係性を支える道徳について質問し、また地域社会の重要性は理解したうえで、しかし一番重要になるのはナショナルなレベルでのガバナンスをどうデザインするかにあるのでは、と指摘した。フロアからは流動的・ネットワーク型の社会におけるresilienceとはいかなるものかという質問や、二つの発表における地球圏・生命圏・人間圏の相互関係はいかなるものだったのか、さらに人間圏のなかでも親密圏はいかなる役割を果たしたか、という質問が出た。加えて、重要なのは公共圏でも私的領域でない、共同性の領域であるのではないか、という指摘もなされた。

(木村周平)

 

 

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