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「人間の安全保障と開発―国際規範の指標化は可能か?」[第22回研究会] (G-COEパラダイム研究会)

活動の記録>>

日  時:10月19日(月) 16:00-18:00 (その後懇親会あり)
場  所:京都大学 東南アジア研究所 稲盛記念館3F大会議室
http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/about/access_ja.html

災害や紛争の脅威からすべての個人・あらゆる集団の生存を保障するという理念を掲げ、「人間の安全保障」はメインストリームの国際規範としての地位を確立しつつあるように思われる。今回のパラダイム研究会では、「人間の安全保障」が守ろうとする人間の「中枢」部分とは何か、また「人間の安全保障」の指標化は可能かという問題について、峯陽一先生(開発経済学、アフリカ研究)にお話しを頂き、その上で、本GCOEプログラムの「生存基盤」および「生存基盤指数」との比較を念頭におきつつ議論したい。

講師:峯陽一(大阪大学グローバルコラボレーションセンター)
「人間の安全保障と開発―国際規範の指標化は可能か?」

コメンテーター:
佐藤孝宏・和田泰三 (京都大学東南アジア研究所)
生方史数(岡山大学)

講演要旨:人間開発(HumanDevelopment)は、経済成長至上主義に対する理念的カウンターバランスとして登場し、1990年から刊行されているUNDP(国連開発計画)のHDR(人間開発報告書)を通じて、国際規範としての地位を確立した。人間開発の概念は、インド出身の経済学者アマルティア・センのケイパビリティ理論に立脚するものである。人間開発を実践に適用するために、UNDPはHDI(人間開発指数)を開発したが、センは指数化に当初は反対だったという。1994年のHDRでは、新たに人間の安全保障(HumanSecurity)の概念が提唱された。2003年の「緒方・セン報告書」において、センは、人間の安全保障を危機論(ないし、リスク論)にひきつけて理解する視点を提示している。経済開発と社会開発を統合した人間開発に対して、人間の安全保障は、人間開発を政治と人文学の領域に拡張するものだと解釈することができるかもしれない。しかし、人間の安全保障を計測する指数は、いまだに登場していない。この20年間の国連を舞台とするヒューマン・ノルム(人間性にかかわる規範)の展開を跡づけながら、人間の安全保障の考え方の強さと弱さ、そして指数化の力と限界について、問題提起したい。

【活動の記録】
報告者の峯先生から、過去20-30年の間に国際規範として確立された「人間開発(Human Development)と、新たな国際規範として展開されつつである「人間の安全保障(Human Security)について、その発展の背景や経緯、理念と解釈、そして指標化の可能性と問題点について詳細・丁寧に報告された。本プログラムが目指している持続型生存基盤と生存基盤指数にとってきわめて示唆的なものであった。
 

「人権」、「人間開発」、そして「人間の安全保障」はともに、過去20-30年の間に国連を舞台につくられ、展開された国際規範であり、政治的な意味合いがつよい概念である。「人間開発」は、世銀やIMF主導の経済発展に伴うさまざまな社会問題(失業、貧富格差、医療保険)に対する批判と、より「人間的な開発」に対する期待から、経済学者アマルティア・センのケイパビリティ理論から発展した概念である。人間開発を評価するツールとして開発された人間開発指数は、単純化すぎると批判される一方、従来の経済発展しか評価しない経済指数(一人あたりのGDP)に対して、生存指数と教育指数を加えることで、経済成長至上主義への反撃として重要な意味をもつ。「人間の安全保障」は冷戦の終焉やグローバリゼーションが進行するなかで、従来の軍事や公安を中心とした国家の安全保障(National Security)とは違って、一人ひとりの人間をさまざまなリスクと恐怖(貧困、伝染病、災害、紛争など)から守る新しい概念である。人間開発は右上がりの進歩的な発展経路を示しているのに対して、人間の安全保障は脅威による一時的な後退局面を想定した鋸型である。そのため、早期予防をはじめ、慢性的な脅威と急激なリスクの両方に注目すること、ダウンサイドリスク(突然襲ってくる危険)による被害をいかに乗り切るかが重要な課題としている。緒方・セン報告書は人間の安全保障によって守るべき人間の中枢部分については、生存、生活、尊厳というようなコア領域を提示したが、個人・地域・価値の違いをみとめ、より具体的な要素について明記しなかった。人間の安全保障の指標化について、主体をどうカテゴリー化するか、指標化の目標は何か、そして地域性と共通性の問題などが挙げられた。
 

以上の報告に対して、コメンテーターの和田氏は、個人の年齢や社会・経済状況によって安全保障の本質が異なることを指摘し、途上国において個人にとって重要なInformal care (家族や地域でささえられる介護)やinformal safety netが安全保障の中でどう反映できるかについて質問した。佐藤氏は生存基盤指数の指標化におけるさまざまな試みを説明し、人間の安全保障と「サステナビリティ」との関係、「かけがえのない中枢」(Vital Core)と生存基盤の関係について質疑した。生方氏は人間開発・人間の安全保障と生存基盤との接点についてリスクに注目する可能性をコメントした。これらの質疑に対して報告者は、指標をより現実に近づくために社会・経済状況を配慮する必要性、Informalな部分の重要性と定性的なものを指標化する難しさ、物的な評価基準を入れる必要性、国でないカテゴリー化の可能性、そして人間の安全保障はゼロサム的な状況を想定し、生存基盤はより長いタイムスパンを考えているという時間スケールの違いについて返答があった。また、フロアからも多くの質問とコメントがなされ、指標化ではなく類型化の可能性や、人間の再生産と親密圏に注目する必要性や、新しい概念と実践の関係など、多方面から有意義な議論が行なわれた。
 

(文責: 孫暁剛)

 

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