「雨がほとんど降らない岩石砂漠に、ラクダとヤギ・羊に依存する専業遊牧民レンディーレ」というテキスト的な知識しかなく、言葉はまったくできない私は、これからの約一ヵ月間、この集落でホームステイをするのだ。懸命に笑顔をつくって集落に入る私に、子どもたちが群がってくる。そのなかでただ一人英語で「How are you? How are you?」と叫びながら私の手をつかもうとするのがトオルくんだった。あのとき、集落に滞在した約一ヵ月間に、彼は私の通訳兼レンディーレ語教師と自認して、私がどこへ出かけても影のようにそばについてきた。