しかし、こんなのんびりとした時間のもてる日々も長くは続かない。ひとつのキャンプには長くて一か月、短いと2-3日しか滞在しない。ある晩、放牧から戻ってきた人々が、草も少なくなってきたし、向こうのほうに雨雲が見えたからそろそろ移動しようかと話し合っていた。翌朝5時からいつもより1時間もはやく起こされる。皆、あわただしくミルクティーを飲むと、家財道具を再びロバの背に積む。ロバの背からはかわいいヤギの顔がのぞいている。キャンプで生まれたばかりで、まだ歩けない子ヤギたちだ。彼らも生まれて初めての旅に出る。自分の足で歩かないとはいえ、この旅は過酷だ。きっと何頭かは、次のキャンプにたどり着く前に、弱って死んでしまうだろう。遊牧というのは、なかなかに大変な生き方だ。だが人々はまた移動する。今日もロバはおならをするだろう。
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