京都人類学研究会5月例会(2008/05/22)

日 時:2008年5月22日(木) 18:00開場 (18:30 開始)
場 所:京都大学 総合研究棟2号館(旧工学部4号館)4階会議室(AA447)

会場までの道のりは、以下のアクセス・マップをご覧下さい。
アクセスマップ:http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/access/campus/map6r_y.htm
【演題】
タイ山地民ラフの妖術について

【発表者】
片岡樹(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)

【要旨】
妖術なる現象は、人類学の領域における主要な研究対象であり続けてきた。そして、そうであるがゆえに、妖術現象はそれぞれの時代の人類学者の願望を反映したかたちで描かれてきた。機能主義が流行した時代には社会の均衡維持装置として、ポストモダン批評が流行すると今度は、モダニティに対するメタ批評のイディオムとして、妖術は人類学者の希望に応えてきたのである。しかしそのことがかえって、当事者の論理を置き去りにして人類学者の都合を優先する結果を招いていないだろうか。
上に見たような妖術観は、社会の均衡維持装置であれメタ批評のイディオムであれ、大きく言えば妖術の社会的効用を評価する議論である。そこで軽視されがちなのは、当事者レベルでは妖術というものが、往々にして嫌悪の対象以外の何ものでもないという事実である。この点に関し、研究者と当事者とのあいだに認識のギャップがあるように思われる。妖術とはしばしば、その効用を評価する人によってではなく、その根絶を夢見る人々によって支えられている現象だという逆説に正面から取り組むことで、「住民の視点から」の妖術理解がより深まるのではないだろうか。
本報告で考察の素材とするのは、中国南部からタイ国北部にかけ居住する山地民ラフの事例である。これまで東南アジアは妖術研究の「後進地域」であり、またそこでは妖術告発が低調であることが指摘されてきた。ならばそうした事例にあえて着目してみることで、妖術論の閉塞感あるいはマンネリ感を突破できないか、というのが本報告の問題意識である。具体的には、ラフの人々がどのように妖術の根絶を試み、どのようにそれを断念してきたのか、また、現在の村落生活の中で妖術がどのようなリアリティーをもっており、それが社会的不和や個別の不幸とどのような関係にあるのかについて考察する予定である。

【備考】
*事前の参加予約は必要ありません。
*当日は、資料代として200円をいただきます。
*京都人類学研究会は、京都を中心とする関西の人類学および関連分野に関心をもつ大学院生・研究者がその研究成果を報告する場です。どなたでも自由に参加いただけます。

 

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