正直なところ、私はフィールドワークが苦手である。なぜなら、酒も飲めないし、体力もなく、とりわけ、初対面の人とのコミュニケーションが不得意だからである。現地の言葉の習得にも時間がかかった。こんな私であるが、1996年から1998年まで、マレーシアの先住民オラン・アスリの集落で2年半のフィールドワークを行ない、貴重な経験を得ることができた。
フィールドワークでは、様々な戸惑い、挫折、失敗を経験した。それでも何とかフィールドワークを続けるために 、恩師のアドバイスや調査マニュアルを参照しながら 、世帯調査や収入集計調査など、付け焼刃ながら私なりの調査法を 考え出した。そして、その時に、世帯調査から始めるフィールドワ ークの重要性を再認識した。
昨年、「質的調査」について講義する機会を得た。講義では、失敗から学ぶフィールドワーク、世帯調査の重要性 、ゴムやドリアンの収入調査について語った。その際、 「他の人類学者は実際にはどのような調査を行なっているのだろう か?」という疑問が浮かんだ。
本研究会では、マレーシアにおける私の調査経験を紹介しながら、「人類学におけるフィールドワークの基本とは何か?」 「人類学者はどのようにしてフィールドワークを行なっているのか ?」などについて、参加者の方々と共にフィールドワークの技術論 に焦点をあてた議論をしてみたい。
コメント (0件)